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食品は味を楽しむことの他に、生きる上で必要な栄養を補給する機能も有ります。さらにヨーグルトがお腹の調子を整えたり、魚油に含まれるDHA・EPAは中性脂肪を低下させる機能があるなど栄養以上に体に良い効果がある機能が存在します。販売している商品に機能を持っている成分が十分な量含有していても安易に表示することができません。
機能性を表示するには「特定機能性表示食品」「機能性表示食品」「栄養機能性食品」の手続き、基準を満たしていなければ景品法、薬機法、食品表示法に抵触しペナルティを受けてしまいます。前編では中小企業の参入が容易な「栄養機能食品」(消費者庁へ届け出不要)と間接的に機能性を起想させる「栄養強調表示」について詳しくお話しさせて頂きました。
後編ではパッケージやホームページに記載すると「がんの予防」「免疫力を上げる」「脂肪燃焼」など薬機法、景品表示表NGの具体的な表現についてまとめて行きます。
「がんが消える」の表現が一発アウトなのは皆さん、いわずもがなかと思います。病気の名前だけ「高血圧」「便秘」「糖尿病」の病気名を記載する時点で、その商品が病気に効果が有るイメージが生まれるためNGです。「回復」も前後の文面関係なくNGです。よって甘いものに「疲労回復」、プロテインに「筋肉の損傷を回復」と書くのもダメです。
予防もNGです。低糖のお菓子に「肥満の予防」、減塩醤油に「高血圧予防」も記載が該当します。この場合栄養強調表示の低糖や塩分を低減させた時の基準を満たして糖や塩分が少ない旨しか表示しかできません。
食品の形状を薬の形状にし、個包装にする(粒チョコレート菓子にありますよね)。さらに飲む時間、用量を決める(夕食後1錠に摂取など)医薬品のような摂取方法の記載もNGになります。栄養補給として「1日当たりに3粒を目安にお召し上がりください」の表現はOKです。
健康診断の結果で記載している健康・病気を判断する指標に関しての記載もNGとなります。中性脂肪・血圧・血糖値・コレステロール・γ-GTBなどがこれに該当します。
「体脂肪が気になるかたに」 「血圧が気になる」がこれに該当しNGです。
中には食品にこのような表現を見た方はおられるかもしれません。記載しているケースは前編でお話ししました「特定機能表示食品」「機能性表示食品」など取得しているため記載することが可能となっています。
食品を摂取することによって体の状態が変化する機能を表示することもNGです。病気でなくても「食欲増進」「女性ホルモンの乱れ」「胎児への効果」「睡眠サポート」「血流促進」がこれに該当します。疲れた時に甘いものを食べる・トレーニングの後に糖と必須アミノ酸を取り入れる事で疲労回復が早く感じることは経験的にある事ですが、「回復」はもともと持っている機能以上作用する事が連想され医薬的な効果としてNGとなります。その他の「おなかの調子を整える」「食物繊維を取り入れて善玉菌が増える」「悪玉菌を抑える」もできません。例外的に善玉菌を摂取することで善玉菌が増えるような表現は可能となります。
健康に対する不安や悩みを訴求を表示し、その食品がその悩みに効果のあるように連想される事も22年12月からNGとなりました。例を挙げると「こんな悩みが有りませんか?眠れない。疲れが取れない」と言った効果を訴求しない表現もダメになりました。この際「腸活」「妊活」「デトックス」も併せて不適切な文言となりました。
美容に関する機能性も記載ができません。女性向けにコラーゲンやイソフラボン、男性向けの亜鉛などを豊富に含むからと言って美容に効果が有る旨を記載する事はできません。老化に対して機能のある表現である「アンチエイジング」「老化防止」「若々しく」「シワの改善」「紫外線を防ぐ」「デトックス」「美白」もNG表現です。特にビタミンA、C、Eの抗酸化ビタミンを豊富に含んだ食品であったとしても「抗酸化」もNGとなります。例えば「○○キサンチンは高い抗酸化作用が有り1食当たり〇㎎含まれています」の様に原料の機能性を表示する事もできません。この場合は「○○キサンチンが1食当たり〇㎎含まれています」はOKです。
ダイエットに関しても厳しく規制されています。パッケージにただ単に「ダイエット」と書くだけでも条件を満たしていないと記載できません。摂取することで痩せる&「たくさん食べても大丈夫(機能性表示食品を除く)」的な吸収を抑える表現もNGです。3か月で-10㎏と実際に効果が有ったとされる人のデータや写真を乗せただけでもNGです。ビタミンB群の様にエネルギー代謝に関与する成分が豊富でも「脂肪燃焼」「代謝促進」も記載できません。
ダイエットに関して記載できる表現は「置換えダイエット」と「ダイエット中の人に不足しがちな栄養素の補給」については記載する事が可能です。
「最」の付くナンバーワンを意味する単語は根拠がない限り(あれば記載ができます。指摘があった時点で適合してなければNG)、記載できません。「最高」「最適」「最速」や「究極」「極限」さらに、これを連想させる「無類」「世界一」「日本一」がこれに該当します。
根拠が有れば「№1」という表示も可能ですが、その調査方法が悪質な場合が有ります。例えば当該商品が1位になるまで条件を変えて繰り返し1位になった時に調査を終了する。また自社より強い商品を外し調査・集計をする、が該当します。このような悪質調査のナンバーワン表示しているメーカーが行政からペナルティーを受けました。
適切な調査で№1を取得しても調査から数年以上、場合によっては10年近く前の表示が有る場合も散見しています。近年、ナンバーワン表示に関して厳しくなる動きがありYahoo広告では直近1年以内のランキングデータしか認めないようになりました。今後は同様に大手EC販売プラットフォームでも悪質な調査内容や古いランキングに対して規制が始まる可能性が有ります。情報の収集や現在のパッケージなどをチェックしてください。
含有成分の機能性を表示することで最終製品の機能性を表示することもできません。「この商品に含まれている○○という原料は××と言う原料を豊富に含んでいます」と記載している場合、最終製品も十分な含有量が含まれている根拠が必要です。
含有成分の歴史的な医薬品的な効果や機能性の伝聞に関しても記載できません。「昔○○は『○○病に効く』と言われていた」の様に実際にそのような効果や歴史的資料が有っても記載できません。
添加物を使用していない旨である表示が厳格化されました。22年4月から移行期間で24年4月より基本的に表示ができなくなります。例えば食塩において一括表示の中に添加物がキャリーオーバー・加工助剤として表示されていなくても食塩の製造中に添加物を使用していたら「無添加」「添加物不使用」の文言は最終の調理品に使用できません。
この規制と同時に「人工○○料」「化学○○料」「合成○○料」「天然○○料」という人口&化学⇔天然の差別化もNGとなりました。一方で「植物由来○○料」の様に由来原料で記載するケースは認められています。
ステルスマーケティング規制が23年10月からスタートしました。インターネットなど経済的メリットを受けて推薦、広告活動を行うにはメーカーから供与を受けている旨を明示が必要になりました。加えて、これまで前出のNG表現を第三者が行った場合、広告活動を依頼した側に対しても「知らない」では済まされなくなり、取り締まりの対象となります。注意が必要なのは過去の投稿も対象になりますので、過去にNG表示を行った投稿の修正、削除が必要です。
この動きを踏まえてアフィリエイトを斡旋する企業が薬機法、景品表示法に抵触する表現とOKな表現をまとめた比較サイトをアップしてくださっているので表現に悩んだ時は参考にしてください。
薬機法、景品法の他にも食品に関する表示に関して食品表示法や公正競争規約などの規制が有ります。例を挙げると加工食品に「天然」は記載できず、未加工のものにしか記載できません。魚でも養殖の実態の有るブリのような魚種に「天然」と記載する事ができますが、アジやサンマの様に養殖実態のない魚種に記載できません。果汁を5%以上使用していない飲料などに果物の写真や絵、商品名を使用できず、使用する場合は果汁の配合割合、1%未満は「無果汁」・「画像はイメージです」と記載しなければなりません。
冷凍食品の例では「カニコロッケ」「クリームコロッケ」特色のある原料名を付ける場合は一定量以上の原料の配合割合が含まれ、配合割配も記載しなければなりません。○○県「名産」は原料の原産地か、製造地が表示している○○県内でなければなりません。加工品に「有機○○、オーガニック○○」と記載する場合は原料に有機○○を使用するとともに有機JASの工場と製品の認定を受けなければ表示することはできません(一括表示の原材料表示に強調させずに表示する事は可能)。
この様に、食品のパッケージやポップ、ホームページには多くの規制が有りますので機能性などのメリットを記載する場合は慎重に行ってください。
表示やパッケージを作成するうえで私がおすすめしている流れです。法律をすべて理解する事は大変です。そのため大手企業の商品の表現を参考にします。
①商品の企画の段階でアピールしたい文言をリストアップ。
②大手企業の類似品の表示を徹底分析。
(大手でない所はNG表現をしているケースが少なくありません。注意が必要です。)
③アフィリエイト斡旋企業のNG表現まとめサイトを読込む
④検索エンジンで「食品 表示 NG ○○」で検索
(○○は表示しようとしている文言やフレーズ)
⑤表現が不適切そうな場合、間接的な表現で代替できないか検討する。
(これもアフィリエイト斡旋企業のまとめサイトが参考になります)
⑥これを複数の担当者で行い、行き過ぎた表現で無いか確認します。
フレーズの前後の表現やパッケージ全体の記載内容でOK、NGが分かれるケースも有ります。例えばプロテインに「引き締まった体」と書こうとします。ただ単に書くだけではNGとなるのですが、運動+栄養補給の説明やイラストを入れる事で記載できる場合も有ります。この様なスルーできる表現は多くの大手他社商品やNG/OK表現まとめサイトに沢山触れることによって感度が磨かれていきます。
いかがだったでしょうか?販売部門は機能性などを強調したい要望が有る一方で販促資料やホームページもチェックする必要が有ります。景品法は踏み込んだ表示の根拠を求められた後、15日以内に根拠が提出されなければ、根拠が正しくてもペナルティが科せられます。また、表示に関しても、毎年の様に基準が変更されます。例えば23年10月からのステマ規制や23年㋃から始まった「遺伝子組み換え不使用」が検出限界以下でないとNGなどルールの変更があります。アレルギーも特定原料に準ずるもので「マツタケ」が削除「マカデミアナッツ」が追加となるという話題も出てきています。
景品法、薬機法も新しいガイドラインや食品表示法も数年おきに変更点が出ます。パッケージの切替の猶予期間が有りますが対応が間に合わないと資材の廃棄も出てきます。情報収集と自社のパッケージや販促物、ホームページも定期的に見直していきましょう。
この記事を書いた人
山本 宗幸20年にわたり中規模食品会社で商品開発、事業開発、製造技術、生産性向上の業務を行ってきました。「技術で食と人を豊かにしたい」をミッションに活動しています。