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食品メーカーにとって百貨店と取引するメリットとしては以下が考えられます。
①百貨店と取引することによる信用度向上
②百貨店の顧客層にアプローチでき、固定客化できる可能性
③認知度向上
これらについて詳しく述べていきます。
百貨店と取引を目指す食品メーカー様にとってはこれが最も念頭にあるメリットではないでしょうか。なんだかんだいってもやはり百貨店には“信用力”があります。百貨店側も商品として扱うからにはしっかりと調査しますし、取引基準を設けています。“信用”が百貨店にとっての命綱であるといっても過言ではありません。そのような厳しい審査基準を設けていると思われる百貨店と取引することは、その食品メーカー様にとって絶大な信用力を生むことになるでしょう。
“○○百貨店と取引しています”の一言が、御社の営業活動をとてもスムーズにしてくれる可能性は大きいでしょう。(下記三越伊勢丹グループ(imhds.co.jp)より)
こちらも非常に大きなメリットと言えるでしょう。食品メーカーにとっては、日頃繋がりのない新たな顧客層が開拓できるわけです。特に百貨店の顧客には大口個人顧客、大口法人顧客が存在しています。貴社商品でその顧客層を掴むことができるかもしれません。そうなると百貨店側からも必要とされる存在となれるでしょう。百貨店側とすれば顧客に喜んでもらえるテナントなり、商品を用意できることにメリットがあるからです。是非、百貨店側から大事にされる取引先となってください。
一度固定客化してしまえば、仮に御社がその百貨店から撤退した後でも御社とおつきあいしていただける可能性があります。そういった意味でも百貨店との取引によるメリットは想像以上に大きいと言えるでしょう。(日本橋高島屋S.C.トップページ(takashimaya.co.jp)より)
こちらも当然ながら発生するメリットであり、影響の大きなものです。今まで認知度向上に苦しんでいた過去が嘘のように、認知度が向上します。それだけ百貨店には集客力があり、多くの消費者の目につくものなのです。➁のメリットと重なりますが、御社の固定客となってくれる消費者が格段に増えるはずです。
(三越伊勢丹グループ(imhds.co.jp)より)
これら➀~3以外にも、諸々メリットと言えるものが発生するでしょう。百貨店に出入りする取引先同士のネットワークも広がるかもしれません。外商マンに見染められて、外商部での企画品に取上げられるかもしれません。せっかく百貨店と取引できたのであれば、徹底的に距離を縮めることで享受できるメリットは大きくなる可能性が高いです。
さて、メリットがあればデメリットも存在するのが世の常というもの。百貨店と取引することは良いことばかりではありません。当然そこにはデメリットも存在します。以下にそのデメリットを示します。
いわゆる“場所代”とも呼ばれますが、売上から〇%、もしくは固定家賃〇万円/月という形で百貨店に納める経費です。テナントとして百貨店に出店している場合、これにスタッフの人件費などが加算されたり、協力金名目でかかる経費もあります。とにかく百貨店に経費を納めると、それほど儲からない、という声を多く聞きます。事業者によっては完全に“赤字”になるところもあります。その逆で、“儲かって仕方がない”事業者もいるでしょう。通常百貨店側から“お願い”してテナント出店してもらう事業者さんへのロイヤリティや手数料は、他の出展者と比較して非常に低いものですから。テナントによっては人件費まで面倒見ます、的な契約もあるかもしれません。それほど“お願い”されるテナントは強いのです。百貨店側からしても、消費者に人気のあるテナントを誘致できれば、百貨店自体の人気も向上するわけなので、ロイヤリティを下げてでも来てもらいたいのでしょう。しかしこの方式が蔓延してきたために百貨店は儲からなくなったとも言えるのですが・・。
もうひとつ付け加えるなら、仮に御社がテナント出店していた場合、既述した“消化仕入”によって、売れ残りリスクは御社が負担しなければなりません。百貨店側はあくまでも“売れた分だけ仕入れる”からです。
そういったわけで、一部を除いて多くの事業者にはかなり高額な手数料をとられることになったり、売れ残り負担、人件費負担が発生します。既に述べたメリットと天秤にかけて判断することになるでしょう。
これをデメリットと呼ぶのが適切かどうかわかりませんが、多くの食品メーカー様にとって通らなければならない道かもしれません。というのも、百貨店で扱う商品価格はかなり高額となっています。これは百貨店で扱う商品は原材料やパッケージなど、マーケティング面で“特別感”を演出するからです。そして百貨店側は、取引先により品質の良くてより高く売れる商品を求めます。なので取引先は自社の店舗で販売するものと全く同じものを百貨店で扱わず、原材料や品質をよりグレードアップさせたものを販売するわけです。勿論全ての取引先がそうではなく、自社の店舗で販売するものと百貨店で販売するものとが同じ、という事業者も存在します。ただ、上述したように新たな商品開発が必要となるパターンが多いことも事実です。
以上2つのデメリットを挙げましたが、こうみるとやはりメリットの方が大きいように思えます。食品メーカー様におかれましては、それぞれの事情を勘案のうえ、百貨店との取引を目指してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
竹内 涼太百貨店外商を約8年、食品SM共同経営約16年、食品SM内でのテナントとして青果・日配・米等扱う商売を約16年経験してきました。「売る」ためのあらゆる手段を駆使して事業者様を応援します!