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「海外進出で、すでに競合他社が参入している場合、新しい価値をどのようにユーザーに提案していけばいいの?」
このような疑問はありませんか?
同じ商品であっても、その商品のどういう特徴を強調して、どのように伝えるか(ブランディング)によって、ユーザーが感じる価値は大きく異なってきます。
これを逆手に取れば、すでに競合他社が、似たような食材を展開している場合であっても、ブランディングによって、新しい価値を提示して、需要を生み出せることができるのです。
本記事では、ベトナムでの事業歴10年・日本企業の海外進出支援事業を営む筆者が、食品をブランディングする上での価値の作り方について解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
価値とは、「それがどれくらい役に立つかの度合いや性質」と定義されています。
例えばブランディングにおいては、商品が
✔️ユーザーのどのような願いを叶えるか
✔️ユーザーのどのような悩みを解決するか
✔️ユーザーの人生をどのように豊かにするか
✔️ユーザーの感情をどのようにポジティブにするか
✔️ユーザーにどのようなメリットを提供できるか
などが「価値」となります。
食品をブランディングする上で、具体的にどのようなことが「価値」になりうるかを網羅的に整理しましたので、順番にご覧ください。
「安い」「安いのに美味しい」というのはそれだけで「価値」になります。
例えば「サイゼリヤ」というイタリア料理チェーンは、「安いのに美味しい」という価値を感じているユーザーが多いのではないでしょうか。
百均ショップも「安いのに質がいい」という理由で人気ですよね。
「安い」商品は「お得感」がありますし、ユーザーに対して「節約できる」という具体的な効用を提供します。
日本から東南アジアなどに食品を輸出する場合は、運送コストなどがかかるため、「安い」を価値にすることは難しいかもしれませんが、中国や韓国などの競合他社が「安い」という価値を打ち出して参入してくるケースもあるため、意識しておきましょう。
「安全」な食材であることも、大きな価値になります。特に発展途上国など、安全な食材が必ずしも当たり前でないような国であれば、なおさら大きな価値になります。
「安全」であることで、「安心できる」というポジティブな感情も与えますし、「健康に害を与えない」という具体的な効用も提供するため、価値を感じてもらえるのです。
当たり前ですが、「美味しい」も重要な価値です。海外進出においては、「現地の人々が美味しいと感じる」ことが価値になります。
似たような食材であっても、現地の人にとって、「まあまあ美味しいけど少し甘すぎると感じる」ような食材と、現地の人が好む甘さ加減で「ものすごく美味しい」と感じてもらえるような食材では、価値が大きく異なってきます。
例えば水産物や果物の場合、「サイズが大きい」こと自体も価値になることがあります。
常に刺激やトレンドを追い求める都会の人々にとっては、今までにない、「新しいものである」というのも、価値になります。
ただ、新しいものはいずれ古くなるので、一時的な価値にしかならないことに注意が必要です。
人は希少なものに価値を感じます。ここでしか味わえないものや、オンリーワンな存在であることも価値の一つです。
例えば、「アイスクリーム屋さん」だと、ありふれた存在で希少価値はありませんが、「抹茶の濃さを5段階で選べる抹茶アイス屋さん」だと、かなり尖っており、希少価値が高いです。
ある程度経済発展している国だと、いろんな種類の美味しい食材が市場や店舗に出回っている中で、「ただ美味しい」「ただ品質が高い」だけだと、「ありふれた存在」として埋もれてしまいます。
そのため、「〇〇」×「〇〇」×「〇〇」という形で価値を掛け算したり、特徴を掛け算することで、唯一無二の存在に尖らせるのも、1つの価値の作り方です。
レストランであれば、日本っぽい、異国感というのも1つの価値です。
食事だけでなく、空間から、日本っぽさや、異国感を感じられると、日本に旅行したような気分になって、非日常を体験したようなポジティブな感情を与えられるからです。
私たちがディズニーランドに遊びに行った時に感じるのは「異世界感」という価値で、「異国感」「日本っぽさ」と同様の価値です。
多くの人は、「みんなと同じでいたい」「みんながするなら、私もしたい」という願望を持っています。
そのため、「流行っている」「みんながやっている」ということ自体も価値になります。
ただ、これも「新しい」と同じで一時的な価値であるので、注意が必要です。
人間は矛盾した存在で、「新しいもの」「刺激」を求めるにもかかわらず、同時に「異質な存在を嫌う」「変化を嫌う」という性質も併せ持っています。
そのため、「親しみやすい」というのも重要な価値で、「新しいのに、慣れ親しんだところもある」という価値を提示できると、強い価値になります。
「健康にいい」という価値は、「生き続けたい」という人間の根源的な願望をかなえる価値です。
具体的に健康にプラスの影響を与えるという効用もありますし、「健康にいいことができて、なんだかいい気分」というポジティブな感情も提供します。
人は、「自分で選べる」「自分で決められる」ということが好きです。
例えばサブウェイのように、パンの生地から具材まで自分で選べるだけでも、嬉しい気持ちになったり、「特別感」が生まれたりします。
パッケージや店頭が、カラフルで、ワクワク感を感じたり、気分が高揚するようなデザインになっていると、それ自体も大きな価値です。
「高級感」のあるものを購入すると、「自分自身もハイレベルな存在になったような高揚感」を感じられますし、「高級なものを購入できる自分を他者にアピールしたい」という承認欲求にも応えられるため、大きな価値です。
写真映えする食材は、「SNSに投稿して自分をアピールしたい」という気持ちを叶えるという価値があります。
人には「人と繋がっていたい」という根源的な願望があります。商品の背景となっている「人」を軸としてストーリーに共感できると、商品を購入することを通じて「その人と繋がりたい」という願望が叶えられるのです。
日本での商品展開とは違い、海外進出におけるブランディングでは、以下の点が重要です。
✔️価値がわかりやすいこと
✔️マスではなく、ターゲットを明確にして価値を訴求すること
同じ言語を話し、文化や食材についてある程度の共通認識がある日本人とは違い、海外の人はその食材や食材を生かした食事について、全く前提知識がないことがほとんどです。
そのため、その食材にはどのような特徴があり、他のものと比べてどのような違いがあるのか、価値を現地の人にもわかりやすく伝えなければ刺さりません。
特に、日本食品を海外で展開する場合、輸送コストがかかり、どうしても値段が高くなるため、より一層「価値」をわかりやすく伝える重要性が高くなるのです。
価値をわかりやすく伝えるためには、「1.食品ブランディングにおける「価値」とは」でお伝えした価値を参考に、どういう価値が刺さるかを明確にした上で
✔️商品名で、「価値」といえば「〇〇」と誰でも思いつくようなキーワードを盛り込む 例)和風といえば、京都
✔️パッケージや商品展示のデザインで価値をわかりやすく伝える
✔️SNSや店頭での説明で価値をわかりやすく伝える
などの工夫が重要です。
海外では、日本とは違い、マレーシアのように多民族が共生している国家も多いです。民族によって食文化や食の嗜好も異なるため、全ての民族に向けて商品を展開して売れることは少ないです。
どの民族のどの所得層に届けるのか、ターゲットを明確にし、ターゲットの好みを踏まえたブランディングをすることが重要です。
ターゲットの好みを精緻に把握するためには、現地での調査が重要になってきます。
本記事では、食品ブランディングにおける価値の作り方を網羅的にご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
ぜひ本記事やYoutubeをご確認いただきながら、海外進出におけるブランディングを議論していただければと思います。
この記事を書いた人
荒島 由也スター・コンサルティング・ジャパン代表、STAR KITCHEN創業者。ベトナムで料理教室、洋菓子製造・販売事業も展開。ホーチミン高島屋に店舗を持つ他、 スターバックス、セブンイレブンなどを取引先に持つ。