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日本市場の縮小により食品メーカーにとって海外進出は必須になってきています。
ただ、輸出って難しそうと思われている社長さんもまだまだ多いです。
この記事では、食品メーカーにとって海外輸出が必須になってきている背景と、実は輸出は簡単である理由をお伝えします。
ぜひ輸出のイメージを塗り替えて御社も海外への一歩を踏み出してみてください。
ご存知かもしれませんが、今、日本の食品産業は停滞を続けています。
以下は、矢野経済研究所による日本国内の食品市場の推移のデータですが、
恐ろしいほど横ばいな状態が続いていることがわかります。
すでに日本市場は成熟しているため、これ以上大きく伸びることは無いのが現実です。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3078
ここで重要なのは、値上げしている企業が多いのに数字が増えていないことです。
原材料の高騰により多くの企業が値上げに踏み切ったにもかかわらず横ばいということは出荷量=売れている数は落ちていることになり
”実質的には衰退している”ということを意味しています。
一方で海外市場を覗いてみましょう。
https://www.maff.go.jp/primaff/seika/pickup/2019/19_01.html
こちらは農林水産省によるデータですが、海外市場はこちらに示す通り2015年から2030年にむかって1.5倍もの成長が見込まれています。
これは主にアジア圏の人口増加・経済成長による一般層への質の高い食品普及によって食品の付加価値が上がっていることが原因です。
つまり、海外市場は日本と比にならないくらい拡大を続けており、日本企業にとって非常に大きなチャンスが到来していることを意味します。
アジアでは1.9倍にも伸びる予定で、大きな市場に成長を続けています。
日本の市場は衰退の一途をたどり、世界市場は拡大を続ける。
もはや輸出をしない企業は衰退していくことを意味していませんでしょうか。
海外市場の拡大に関連して、いま食品輸出が大幅に伸び続けています。
食品輸出額は年々増加を続けており、2022年の輸出総額は1兆4,140億円。
前年比は14.2%と、大きく拡大を続けています。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/attach/pdf/zisseki-58.pdf
残念ながら2023年においては、福島の処理水への海洋放出に伴い、中国へ水産品の輸出ができなくなりました。
そのため、2023年はここから伸び率が下がる可能性があります。
しかしながら、日本政府は今海外輸出事業の拡大に力をいれており、
海外輸出を後押しする補助金や無料支援を行う機関など、日本企業の海外進出を積極的に推進しています。そのため、今後継続的に伸び続けることが予想されています。
今の勢いでは、2030年には3-4兆円規模になっていくでしょう。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/meguji.pdf
2023年、FOODEXをはじめとする様々な展示会に参加してきました。
その中で様々なイベントブースへ参加し話を聞いてみると、
3-4割の会社が何らかの形で海外に商品を展開しているとわかりました。
ただ詳しく話を聞くと海外に自ら売り込みにいったり、海外展示会に参加したりなど、
積極的な活動はしておらず、ほぼすべての企業が、商社や卸を介して海外への販路を作っている状況です。
自ら海外へ取引を持ちかけたり、海外展示会に積極的に切り込んでいる企業は、数%くらいの印象でした。
今の時代は自社で積極的に活動しなくても自社商品を世界に広める優秀な商社や卸があります。そのため、輸出へのハードルがかなり下がってきています。
多くの企業にとって、海外進出はハードルが高いと感じています。
「言語も文化も違う相手と取引をするのは不安」
「小さい会社でも相手にされるか不安」
「しっかりお金が回収できるか心配」
そんな気持ちを持っている方も多いです。
本記事では最後に、実は食品の輸出はハードルが低く、簡単に挑戦できるとお伝えしたいと思います
世界的に見ても日本人は英語が苦手であり、英語を使って海外で積極的にビジネスをすることに抵抗を感じるケースがあります。
でも、実はこれは輸出に関係ありません。
海外の企業で、日本の食品を積極的に取り入れたい会社は日本担当を有しており、
日本語を話せる人が交渉に出てきてくれるケースが最近は多くなっています。
特に香港、タイ、アメリカ、マレーシア、中国などの企業です。
私も海外メーカーと直接交渉をしていますが、現地の日本担当の方が日本語を話せるため、
日本語で交渉を進められることがほとんどです。
逆の立場で考えるとわかりやすいのですが、日本で積極的に中国製品を流通させたいと考えている日本の会社があったとしたら、中国語 or 英語がわかる人が現地のメーカーと交渉を行いますよね。
それと同じことが世界でも起こっており、もはや日本語で交渉が完結することも珍しくないのです。
そもそも、日本の商社を利用すれば日本国内の会社とのやり取りで商談が完結することも多いです。
さきほどお伝えしたように、積極的に熱意を持って海外を開拓している企業は少なく、
ほとんどの企業が商社や卸を使って間接的に海外とやり取りしています。
そう考えると海外営業とはいっても日本国内の営業と行っていることは変わりません。
無料で海外貿易に関する情報を入手できるJETRO (ジェトロ、日本貿易振興機構)で
英語文書の作り方、コンテナの用意の仕方、通関書類の作り方などの様々なセミナーがたくさん開催されていますが、こういった複雑な内容は学ばなくても海外輸出を始めることは可能です。
貿易実務講座
https://www.jetro.go.jp/elearning/gaiyou/kiso/
難しいことを学んでからでないと海外に出られないと考えている会社も多いですが、
決してそんなことはなく、今は全部商社に丸投げすることができる時代なのです。
海外との初めてのやり取りで一番不安になるのが、「しっかりお金を回収できるのかどうか?」などの「金銭のやり取り」に関する不安かと思います。
この点も、今となっては問題になることはほとんどありません。
まず、そもそも商社が間にはいるケースであれば、この心配は不要です。
大半が決済も日本国内で完結しますし、直接やり取りをするケースでも、今は海外のバイヤーも日本人が決済に不安を抱えていることを把握しています。
そのため、お金の”先払い”に対応しているケースも増えてきました。
すべて先払いでなくても、7割〜8割は払ってくれるケースもあり、少なくても半額までは交渉に応じてくれる企業が増えてきています。
もし後払いや先払い額が半額以下のような交渉を進めてくる会社があるならば、断る選択をすれば安全です。
また、先払いを断られるときや、先払い額が低い場合、間に商社を入れることを伝えてみましょう。そうすると交渉に応じてくれるケースが多いです。
国内の市場衰退に伴い、日本における食産業は衰退しつつあります。
そんな中、大きく伸びている海外市場に参入することは今後の業績を大きく変える選択になるでしょう。
これまでの常識であれば海外への進出はかなりハードルが高く、英語ができる優秀な人材や手探りでも現地で交渉を進める力が必要でした。
でも今は食品メーカーにとってこれ以上ないほど環境が恵まれており、海外進出のチャンスが訪れています。
このチャンスを活かして海外への一歩を踏み出してみると大きく業績が変わっていくでしょう。
この記事を書いた人
北條 竜太郎慶応義塾大学法学部卒、京都大学大学院修士課程修了
外資系経営コンサルティング会社の朝日アーサー・アンダーセン(現PwCアドバイザリー)、
オリックス㈱の事業投資部門を経て2006年秋より現職。
家業である大阪の中堅食品メーカー「茜丸」の借金22億円を完済し、再建した経験から
現在は食品業界専門のコンサルタント活動を営む。