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食品業界における在庫管理の効率化は、企業の生産性向上とコスト削減に不可欠な要素です。最近では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した在庫管理の革新が注目されています。DX化により、過剰在庫や在庫不足といった従来の課題を克服し、よりスムーズで精度の高い管理を実現することが可能になっています。ここでは、食品業界における在庫管理のDX化のメリットと、その具体的な導入事例について紹介します。
在庫管理は、原価管理の“かなめ”になります。在庫管理の源流を辿ると
それぞれの管理がありますが、その後に現場で実際に原材料在庫を、どのように管理するかにより、実際の製造コストに大きな影響を及ばすことは言うまでもありません。
在庫管理を怠ると、過剰在庫と在庫不足といった両極端な問題が発生します。
実際に現場で調査を行うと、常態化している現場もめずらしくはありません。
さまざまなデメリットがありますが、まず問題視されるのは、在庫不足によるデメリットです。
顧客の要望に応えることができないことは、今の日本では商売道徳上、信頼を損ねることに繋がりますので、なんとしてでも顧客の要望を満たすように、奔走をしてしまいます。
そして、顧客満足度を維持すると言うことを大義名分にして、常態的に過剰在庫状況が普通の状況になってしまうのです。
そのような状態が続くと、常に原材料原価で経営が圧迫されますし、その過剰在庫を管理するための人件費も余分に発生をしてしまいます。
このような状況を改善するためには、数量・単価・タイミングを維持すればいいと言うのは簡単なのですが、限られた人員で製造を行なっている現場では、なかなかそうもいきません。
そんな中で、D X化は、人員を大きく増やさずとも取り組める解決方法の一つになります。
それぞれに詳しく見ていきましょう
個別要求事項に合わせた製造レシピの生成簡略化。
製造工程管理表の生成を簡略化。
製造現場に合わせた効率化も含めた製造指示書。
製品時の食品安全検査記録付けの指示によりチェック漏れの防止。
適正発注量の算出。
廃棄率、減少率の事前登録と現場からのフィードバックによる修正。
原材料供給会社等の選定、適正価格調整。
それぞれの発注者と受注者のフォームの互換化。
納品時検収管理アプリでのペーパーレス化。
Webアプリで、発注と齟齬のない納品を検収。
納品書類をデータ化して、タブレット等で入荷確認を行う。
欠品時や損壊時は、写真記録を即時共有。
タブレット等での正しい保管場所への誘導と保管指示の実施。
(原材料及び、仕掛かり品)
原材料の使用時にタブレット等での使用登録。
受注量に合わせた正しい出荷指示をタブレット等で行う。
食品事業者の在庫管理におけるDX化をこなった事例では、上記した通りの取り組みを行いました。
他のD X化同様で、在庫管理や在庫管理に関わる業務を一度紐解いてシステム化を行うことで、その時点で既に現状に起こっている、無理・無駄・ムラを軽減することができます。
そして実際の運用では、P Cやタブレットを活用して、目的の操作をするために使用するアプリケーションを、webアプリ化することで、現場での導入がスムーズになります。
(*アプリケーションとソフトウエアの違いは、アプリケーションは、目的に応じた機能をするために開発されたプログラムですが、ソフトウエアは広義で、アプリケーションなどを含め、パソコンそのもの自体を機能させるプログラムなど全般の総称になります。)
アプリケーションのweb化とは、元来はP Cやタブレットなどのデバイス(デバイス=パソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末や、それらに接続する周辺機器)自体にアプリケーションをダウンロードして使用する方法をとってきましたが、通信インフラの発達(通信速度や量の許容量増大)や、webサーバーなど安全性・経済性・利便性の向上により、デバイスからサーバーに、アクセスをしながらアプリケーションを利用することが可能になりました。
そのことにより、ダウンロードの時間の大幅削減ができ、またデバイスへの負担が少なく、さらに使用するデバイス自体の選択肢も広がり、手軽にアプリケーションを利用することが可能となっています。
現場でも持ち場の手元で、web環境さえあれば、タブレットなどのデバイスを利用して、アプリケーションの利用も可能になります。
リアルタイムで、あるべき場所にあるべき量が明確に用事されるために、原材料や仕掛かり品の過不足などの発生が激減します。
また、現場を離れていても、自宅にいても、webアプリを立ち上げるだけで、在庫状況などを確認することが簡単にスマートフォン上で可能になります。実際に、営業担当者が出荷可能な商品を顧客との商談中にスマートフォンからリアルタイムで確認することも実現しています。
Webアプリと各現場の作業に合わせて、最も使いやすいデバイスの組み合わせが自由であり、IDとP A S Sさえあれば、いつでアクセスもできるため大変導入しやすいシステムになっています。さらに、すべての在庫管理の記録と記録者のI DやP A S Sが紐つけされているため、誰がいつ記録をしたかを検索をかけることも容易です。
そして製造品に関しても、ロット毎の原材料との紐付けを行うことができますので、クレーム時などのトレーサビリティー対応を迅速に行うことも可能です。
このシステムを導入した食品工場では、以前は製品にクレームがあった場合には概ね8時間程度の遡り調査が必要でしたが、瞬時にその製品の原材料特定ができるようになりました。
食品業界の在庫管理DX化は、過剰在庫や不足といった問題を解決し、製造コストに大きく影響します。Web受注化や製造レシピ管理の詳細化、適正発注管理などを通じ、原材料の自動発注や納品情報のデータ化が実現。これにより、情報漏れの防止、在庫管理の効率化、製造指示の精度向上が可能になります。また、タブレット等を使用した入荷・入庫・出庫・出荷情報の管理がスムーズに。DX化による在庫管理は、原材料原価の削減、人件費の節約、商機のロス減少に大きく貢献します。
このように、たくさんの人がたくさんの時間を要してようやく管理できていた(またはそれでも不十分であった)在庫管理がD X化により実現し、その結果で原価と人件費、また商機をロスを大幅に削減することに貢献をしています。
食品業界の在庫管理DXにご興味がある方はぜひお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
大西 周食のプロに仕組みづくりを支援するコンサルタント業を25年営んでいる中で、今の日本に不可欠な食品事業者向けのデジタル化・D X化を推進するコンサルタント事業も5年前から取り組んでいる。