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「マレーシアにも自社の製品を輸出したいが、実際どうかな?」
「マレーシアはすでにマーケットが成熟していると思うが、どうしたら成功できるか?」
マレーシアへの食品輸出を検討しているものの、多くの競合他社がいる中で、食品進出を成功させることができるかわからず、お困りではないでしょうか?
マレーシアはハラルビジネスのゲートウェイでもあり、陸続きのシンガポールにも併せて展開できるなど、魅力溢れる市場です。商品によっては競合は多いですが、現地生産を通じて物流コストを抑え、販売価格を抑えることなどの努力によって、現地で市場を獲得する可能性を拓くことができます。
そこで本記事では、ベトナムでの事業歴10年・日本企業の海外進出支援事業を営む筆者が、現地取材をもとに、マレーシア市場の魅力と進出成功の鍵を握るポイントをお伝えしていきます。
ぜひ最後までご覧ください。
マレーシアは、食品メーカーにとって、魅力あふれる市場です。
マレーシアは、直近では中国景気低迷の影響で鈍化しているものの、経済成長が著しく、富裕層も増加、購買力も高くなっています。
それだけでなく、マレーシア市場を開拓することが、中東やシンガポール展開への足がかりになるなど、世界的な食品輸出を進める上で重要な国になのです。
それでは詳しく見ていきましょう。
イスラム教徒が多い国に食品を売っていく上では、ハラル認証が必須になってきます。
そして、マレーシアのハラル認証は信頼度が高いため、マレーシアのハラル認証を獲得することで、中東などのイスラム教国家に輸出することも容易になってくるのです。
マレーシアのハラル認証への信頼度が高いのは、国家が所管しており、システマチックに認証基準が定められていることから、他のハラル認証と比べても通過基準が厳しいことが理由です。
食品をイスラム教各国に展開する上で、それぞれの国のハラル認証を取得するのは、手間とコストがかかりますが、信頼性の高いマレーシアのハラル認証を一度獲得してしまえば、世界各国へ横展開しやすいです。
こうした意味で、マレーシアはハラルビジネスのゲートウェイとも言えるのです。
マレーシアに進出する場合、陸続きのシンガポールと併せて展開できるのも魅力の1つです。
実際にマレーシアに展開する多くの企業がシンガポールもセットで進出を計画しています。
マレーシアからシンガポールは、トラックで6時間・半日程度の距離です。
また、東南アジアでは、東南アジア間の貿易の関税がゼロになります。
そのため、例えばマレーシアで現地生産して、シンガポールにも横展開する場合、日本から輸出するよりも大幅に物流コストを抑えることができます。
また、シンガポールは、1965年まではマレーシアの一部であったため、シンガポールとマレーシアの食文化は非常に似ています。そのため、マレーシアで市場を獲得できると、シンガポールでもヒットする可能性が高いです。
このように、マレーシアに進出すると、シンガポール市場もセットで横展開できるというメリットがあります。
このような魅力があるマレーシア市場に進出する上では、
▼マレーシアビジネス成功の鍵
①テストマーケティング後の改善アクション
②コスト・販売価格を抑える
③コストを抑えるための現地の工場で生産する
などが重要になってきます。
これらは、マレーシアに限らず、東南アジアビジネス前半で重要なポイントです。
それでは詳しく見ていきます。
テストマーケティングは重要で、多くの企業が実践していますが、テストマーケティングでデータを取得後の改善アクションが取れず、市場で商品を定番化できない企業が多いです。
例えば、テストマーケティングでは、
「価格が高い」
「パッケージがわかりづらい」
「味が合わない」
などのフィードバックを得られます。
それらのデータを受けて、現地での展開を諦めるのではなく、
・価格を適正価格にする
・パッケージを変える
・調味料レベルで現地の人の味覚に合う味に調整する
など、工夫次第でいくらでも可能性は拓けます。
確かに、パッケージを1つ変えるにしても、既存の工場の生産ラインを組み直す手間があり、既存の運用・運営を変えられないジレンマはあると思います。
しかしながら、マレーシア展開の可能性を、それを理由に諦めてしまうのは非常にもったいないことです。
既存の運用・運営を大幅に変えない形で何ができるかを模索しましょう。
マレーシアの販売価格は、日本の小売価格の1.2倍-1.5倍程度が一つの目安です。その範囲の適正価格で販売するためには、原料や物流などのコストを削っていくことが最重要です。
アメリカ・中国・ヨーロッパは、日本よりも物価が高いので、日本製品を日本から輸出しても、適正価格で抑えられますが、アジアだと日本より物価が低いので、コストを抑えることが重要になってくるのです。
コストを削る重要性を理解せず、市場を獲得できない企業が多いのも現状です。
海外輸出担当者だけでなく、生産担当者など、企業全体で協力しながら、価格を下げられる泥臭い努力を行っていくことが重要です。
コストを削る問題は、現地で製造することで基本的に解決できます。
コアな原料は日本から輸出しつつ、包装材や原料を現地で調達し、現地の工場で生産した上で、陸路で商品を運送することがおすすめです。
これにより、最大のコストである物流コストをごそっと削ることができ、現地の適正価格で販売することが可能になります。
マレーシアでは、現地の企業でちゃんとした食品を作っている工場はたくさんあるため、そうした工場を保有する現地の企業とパートナーシップ契約を結んで製造するのもおすすめです。
そのような企業の情報は、現地のコンサルティング企業に相談すると、候補先を教えてくれます。
また、東南アジアであれば、東南アジア間の貿易であれば関税がゼロになるため、例えばマレーシアで展開する上では、マレーシアではなく、東南アジアの他の国で製造拠点を持つことも合理的です。
このようにして、物流コストを抑える方法を探っていきましょう。
今回の記事では、マレーシア市場の魅力と、マレーシア進出成功の鍵を解説しました。マレーシアに限らず、東南アジアのどの国に展開する上でも参考になる重要なポイントです。
ぜひ本記事を参考にしながら、海外進出を検討いただければと思います。
この記事を書いた人
荒島 由也スター・コンサルティング・ジャパン代表、STAR KITCHEN創業者。ベトナムで料理教室、洋菓子製造・販売事業も展開。ホーチミン高島屋に店舗を持つ他、 スターバックス、セブンイレブンなどを取引先に持つ。