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「自社の日本酒を海外に展開したいけど、ベトナムって実際にどう?」
ベトナムでの日本酒市場について、ネットで調べても知りたい情報がヒットせず、お困りではないでしょうか?
ベトナムでは、日本食の人気上昇に伴い、料理との相性の良さなどから、日本酒に興味を持つベトナム人は多く、日本酒マーケットは、非常にポテンシャルが大きい市場です。
一方で、まだまだベトナムでは日本酒の知名度が低いです。ベトナムへ展開する上では、日本酒を知ってもらう取り組みが欠かせません。
そこで本記事では、ベトナム事業歴10年で、唎酒師の資格をもち、白鶴酒造(株)をはじめとした日本酒メーカーのベトナム輸出を支援している筆者が、ベトナムでの日本酒市場について解説していきます。
ベトナムでは、日本酒の人気が高まっています。
農林水産物輸出入統計によると、日本からベトナムへの日本酒輸出額(2022年)は、7億566万円・数量ベース693キロリットルに達し、13年連続で過去最高を更新しています。
実際に、現地の日本食居酒屋を訪れてみると、日本のお酒のボトルが壁一面に置かれており、焼酎や泡盛とともに、多様な銘柄の日本酒を嗜むことができるのがわかります。
ベトナムでは、100種類以上の日本酒が流通しており、特に大吟醸の人気が高いです。
有名な産地や有名な銘柄に対する認知度は低いため、ベトナム人にとっては「値段が高い日本酒=美味しい」という認識で、値段が高い日本酒が人気の傾向にあります。逆を言うと、しっかりマーケティングを行えば有名でない地酒にもチャンスがあるとも言えます。
出典:youtube 海外ビジネスに挑戦!あらしまチャンネル
このように、ベトナムで日本酒の人気が高まっている背景には、日本食レストランの増加や、特別な体験を求める外食傾向、経済成長に伴う外食・小売支出の増加の3点があります。
日本貿易振興機構の調査によると、ベトナムの日本食レストランは、2022年時点で約2,500軒と、2015年の770軒と比較して3倍以上増加しています。
日本食とペアリングしながら日本酒を嗜むベトナム人も増えてきているため、日本食レストランの人気上昇が、日本酒消費量増加に直結しているのです。
ベトナム人の外食文化のトレンドとして、「特別な体験」を求める傾向があります。
通常の食事代よりも、高い料金を支払ってでも、普段とは違う食事を行い、家族と特別な時間を過ごしたいというニーズが高まっているのです。
ベトナム人は、日本酒を、「新しいもの」「高級で特別なもの」と捉えており、日本酒を好んで飲む人が増えています。
ベトナムでは、経済成長に伴い、外食・小売支出が過去10年、毎年10−20%の成長率で成長しています。
ベトナムには、世界中から様々な食文化が流入しており、競争が激しい状況ではありますが、外食・小売支出の増加に伴い、日本酒市場は成長が続くと見込まれています。
日本酒の消費量が高まるベトナムですが、海外全体で見渡しても、非常に重要なマーケットです。
2022年の日本酒の輸出先ランキング9位にはベトナムが入っており、2021年対比の成長率は、ベトナムが輸出先上位10カ国の中でも突出して高いです。
この表からも、ベトナムへの輸出が海外・アジア全体で捉えた場合にも重要だということが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
このようにベトナムでの日本酒市場が拡大している今、日本酒をベトナムに売り込むチャンス!といえます。
しかしながら、まだまだ日本酒の認知度は低いため、ただ売り込めば飲んでもらえるわけではなく、「日本酒を知ってもらう」ための取り組みは欠かせません。
特に、ベトナムの消費者に日本酒を知ってもらう上では、日本酒を販売してもらうベトナムの販売員の方に日本酒を知ってもらうことが非常に重要です。
本章では、日本酒を現地の人に知ってもらう施策の具体例として、以下の5つをご紹介します。
いずれも、筆者が、白鶴酒造株式会社さまや、剣菱酒造株式会社さまなど、様々な酒造メーカーのベトナム展開を支援している中で、実際に行っている取り組みになります。
日本酒をベトナムで売る上では、飲食店の従業員の方に、日本酒について理解してもらうことが重要です。
日本人でも、日本酒の魅力を伝えることは難しいと思いますが、ベトナムの方にとっては何十倍も、日本酒を理解することが難しいです。
そこで、トレーニングを通じて、時間をかけながら、日本酒の歴史や、製法、販売する日本酒の特徴やおすすめ方法などを従業員の方にレクチャーしていくことが重要です。
言葉で日本酒の作り方を説明しても、なかなか伝えきれません。
そのため、オンラインで酒造とベトナムの飲食店を繋ぎ、日本酒がどのように作られるかをリアルに知ってもらうための取り組みを行っています。
現地の販売員の方からも、日本酒への理解が深まったという声をいただいています。
現地の日本食レストランとタッグを組んで、日本酒の魅力を日本食とともに堪能してもらうフェアも開催しています。
フェアでは、売り出したい日本酒をメニューに組み込んでもらい、初めてその日本酒に出会ったベトナム人に試飲してもらえるよう、促していきます。
レストランの従業員の方には、「3-1. 日本酒トレーニング」「3-2. オンライン酒造見学」などで、その銘柄の日本酒の魅力をお伝えした上で販売していただいているため、初めてその銘柄の日本酒を試飲する人にも魅力が伝わりやすい環境になっています。
実際に酒造担当者の方にベトナムにきていただき、現地の販売員のベトナム人と意見交換をしていただく時間も大切にしています。
ベトナム人のリアルな声を聞きながら、ベトナム人に刺さる販売・プロモーション施策を検討することが重要です。
筆者が運営する料理教室などで、国際唎酒師による飲み比べレッスンを開催し、日本酒とどのような料理の相性が抜群かを探る(マリアージュ)提供しています。
このような機会を通じて、日本酒の魅力を、表面的な知識ではなく、より深い感性で伝えられる人材をベトナムで増やしていくことも非常に重要だと考えています。
本記事では、ベトナムの日本酒マーケットの動向と、現地の人に日本酒の魅力を伝えるための具体的な施策をご紹介しました。
ぜひ、この記事を参考に、ベトナムへの日本酒輸出を議論していただければと思います。
この記事を書いた人
荒島 由也スター・コンサルティング・ジャパン代表、STAR KITCHEN創業者。ベトナムで料理教室、洋菓子製造・販売事業も展開。ホーチミン高島屋に店舗を持つ他、 スターバックス、セブンイレブンなどを取引先に持つ。