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海外営業を始めるにあたってまず気になるのが「資料をどこまで準備すればいいの?」「ホームページはどうする?」といった疑問です。
まず大前提として、パンフレットや外国語のホームページを充実させなくても商談を進めることは可能です。
何をどのタイミングまでに準備すべきなのか?について本記事ではお伝えします。
無駄を省きながら最低限の準備で海外営業のスタートを切りたい方は、ぜひご一読ください。
海外進出を考えた時に、パンフレットやカタログなどの資料はどこまで準備すればよいのか悩むケースがあると思います。
結論をお伝えすると、パンフレットやホームページの用意は、具体的な進出先が確定した後で問題ありません。
0スタートの場合、どの国・どの地域・どんな会社をターゲットとして輸出をしていくかをまずは決める必要があります。
その後、進出先の確度が上がってきたらツール類を作成していくのが最もコストを抑えることができます。
0スタートからの海外進出については以下の記事をご参照ください。
▶記事リンク「【食品輸出】食品メーカーの海外進出、ファーストステップ」
まず、最低限用意を始めるとしたら「英語」と「中国語」のパンフレットです。
一番の優先順位はもちろん「英語」ですので、まずは英語から始めていきましょう。
翻訳についてですが、メジャーでない言語に関してはかなりお金がかかります。
例えば、イタリア語とかフランス語などは専門性が高い言語になるので、
そもそも翻訳を請け負ってくれる人を探すのが大変です。
さらに食品の言語は通常の翻訳よりもハードルが高いものになります。
例えば「とろっとした」といった表現。
「コク」といった表現など、味に関する表現や感触に関する表現を翻訳するのが非常に難しいからです。
英語であれば、我々も知識があるので、間違った表現を指摘することができます。
でも、マイナー言語になればなるほど、翻訳された成果物が正しい表現なのかを判断することが難しくなります。
したがって、依頼する相手もある程度信頼のおける翻訳会社である必要があり、かなり高額な翻訳代になってしまいます。
そのため、まずは英語のパンフレットを作り、その後事業を拡大する中で、特定の地域に集中して流通を検討したい場合にマイナー言語の翻訳版を作成する形にしましょう。
なお、翻訳やパンフレット制作に使える補助金があり、海外進出にかかる他の費用と合わせて活用することで費用を大幅に削減できる可能性があります。
詳細は後述します。
まず、ホームページはそこまで力を入れなくても全然問題ありません。
ホームページ制作については基本的には自動翻訳での対応で良いと考えています。
海外展示会へ出るまでに最低でもトップページくらいは、外国語表記ができるようになっていれば十分です。
まずはその理由についてお伝えします。
時々、東南アジアとか中国でWebマーケティングに挑戦したい会社さんも見てきましたが、やはり難しいと感じています。
ホームページの用途としても、こちらが営業をした会社に見せる目的であって、
ホームページ経由での問い合わせ獲得などはハードルが高いでしょう。
また、会社によっては現地の人と代理店契約を行って、海外で通販を展開したいケースもありますが、大体発生する問題があります。
それが、現地の人たちの管理が出来ないことです。
アジア圏の人は日本人ほど真面目ではないので、現地を直接監督できない環境で、ビジネスの一部を現地に委ねることは結構リスクが大きいです。そのため、社員を海外に置ける大企業ならまだしも中小企業にとっては海外の通販展開はかなり難しいと考えられています。
また、海外からのアクセスの問題もあります。
例えば中国から日本のWebサイトへアクセスを試みると、ものすごく時間がかかります。
中国の場合情報の制限もあるため、もし中国でビジネスを展開したいならば、中国のサーバーを借りる必要がありますが、これも中国企業しかできないため、ハードルがかなり高くなります。
また、ページデザインのテイストも現地によって好みのテイストがあり、こだわりだすとキリがありません。
中小企業としてはできるだけお金をかけない選択を少なくとも海外進出が軌道に乗るまでの間は、できるだけお金をかけない選択をしたほうが良いです。
基本的には海外用のホームページは、日本のものをそのまま翻訳する形で十分です。
実は私は過去食品メーカーの代表として香港・シンガポールへの輸出に力を入れていました。その際も香港とシンガポールで十分に利益が出るとわかり、より力を入れる一環として各国の言語に合わせたホームページを作成しています。
もし御社が輸出0スタートならば、まずは御社にとって最適な参入国を決定しましょう。
そして、その後、利益が伸びてきたら、本格的なページを作れば最も効率的です。
もし海外の中でも特にアジア圏への進出を検討しているならば、必ず導入したほうが良いツールがあります。
それが、チャットアプリです。
正直ホームページよりも遥かに重要度が高いです。
アジアは今、ほとんどの国が中国のようなコミュニケーションスタイルとなっており、基本的にチャットアプリを経由します。
メールは見ていない人が多く、返信が来ないこともほとんど。
最低限の英語のリーフレットと合わせて、名刺に「LINE」、「WeChat」、「Whatsapp」のQRコードを必ず印刷してください。
商談における名刺交換のタイミングで必ず交換する必要があります。
これをやらないと商談を前に進めることができませんので、
かならず載せるようにしてください。
また、チラシにも営業担当か会社コーポレート用のアカウントのQRコードを掲載してください。
海外進出のツール開発は結局大きなお金がかかってしまうことがほとんど。
そんな時に活用できる補助金を最後にいくつか紹介します。
経済産業省が出している比較的小規模な補助金です。
事業の販路開拓の一貫して発生する費用に関して、
事業費300万円に対し最大200万円まで補助がされます。
ツール類は「広告宣伝費」として落とすことができます。
https://r3.jizokukahojokin.info/
こちらも経済産業省が出している補助金です。
補助率は枠によって大きく異なりますが、海外進出で活用するツール類は小規模事業者持続化補助金と同様に「広告費」として申請できます。どの上限の枠であっても、費用をカバーできる金額の補助金です。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/summary.pdf?1028
こちらは農林水産省が出している補助金です。
本補助金は米製品や米粉製品の新商品開発に関わる費用の補助が行われます。
最大1億円まで補助がされる高額な補助金で、本記事でご紹介したような広告・宣伝費にも活用することができます。
https://www.maff.go.jp/j/supply/hozyo/nousan/231212_161-8.html
0スタートで海外進出を始める段階にある会社の場合、パンフレットや英語版ホームページを作成する前にまずは進出先の国を決定しましょう。
その間は英語パンフレットがあれば十分で、それ以外のツールはまだ作成しなくても問題ありません。
ポテンシャルの高い具体的な進出国が決まったら、そこでツール導入を検討することで余計なコストを抑えて海外への進出を実現できます。
さらに、今は活用できる補助金もいくつかありますので補助金をセットで受注することで
大きくコストを抑えることができます。
ぜひ御社の海外事業フェーズに併せてプランニングをしてみてください。
この記事を書いた人
北條 竜太郎慶応義塾大学法学部卒、京都大学大学院修士課程修了
外資系経営コンサルティング会社の朝日アーサー・アンダーセン(現PwCアドバイザリー)、
オリックス㈱の事業投資部門を経て2006年秋より現職。
家業である大阪の中堅食品メーカー「茜丸」の借金22億円を完済し、再建した経験から
現在は食品業界専門のコンサルタント活動を営む。