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日本で、複数回の面談で時間をかけて営業をするのと違い、海外の展示会や見本市での商談は、1回の商談で勝負を決めないといけないため、求められるスタンスが異なります。
実際に、筆者は日本企業の海外進出支援事業を行っていますが、商材の魅力は高い企業にも関わらず、商談がうまくいかず、海外企業との取引チャンスをみすみすと逃してしまっている企業をたくさん目の当たりにしてきました。
そこで本記事では、ジェトロコーディネーター、中小企業アドバイザー、神戸市海外ビジネスセンターアドバイザーでもある筆者が、海外商談の失敗事例を交えながら、海外商談を成功させるために重要なポイントを解説していきます。
海外商談では、以下のような失敗事例がよくあります。
このように、事前の準備や、商談を成約させるための戦略不足によって、海外企業との取引チャンスを逃してしまうケースが後をたたないのです。
日本では、取引先と時間をかけて信頼関係を構築しながら、商談を進めることがあると思います。
そのため、初めての商談で商品やサービスをいきなり売り込まずに、お互いの理解を深めるための情報交換をして、具体的な取引交渉を次回以降に持ち帰ることも多いと思います。
しかしながら、海外のバイヤーとの商談は、全く違うものとわきまえてください。
冒頭でもお伝えしましたが、海外バイヤーとの商談は、1回限りの面談で勝負が決まるものです。
海外のバイヤーとしても、短い時間の中で、相手企業と関係性を深めたいとは思っておらず、自社にとってメリットがあるかどうかを端的に理解して、その場で購入するかどうかを意思決定したいと思っています。
そのため、商談では、海外バイヤーが契約しようと判断してもらうためのメリットを端的に伝えることが求められるのです。
そのような前提を頭におきながら、海外商談の事前準備を進めましょう。
失敗事例を踏まえ、海外商談に臨む前に、以下の5点を整理することをおすすめします。
それぞれについて具体的に解説していきます。
自社商品・サービスのストーリーや思いも重要ですが、「類似の他の商品・サービスと何が違うのか?」を端的に説明できるように整理しましょう。
海外バイヤーにとっては、商談時に、「他の商品・サービスではなく、この商品・サービスを購入すべき理由は何か?」についての材料を探しているからです。
そのため、端的に、「他の商品・サービスと違って、このような良さがあるから、取り扱えば自社にもメリットがありそうだな」と納得してもらえるための情報にフォーカスして伝えるようにしましょう。
自社の沿革や商品ストーリーなどは、日本文化や商品の前提知識がない海外バイヤーには伝わり切らない可能性もあるため、優先順位は下げて大丈夫です。
相手企業の情報をリサーチした上で、このメリットを提示できたら成約できるというキラーポイントを明確にしましょう。
短い時間の中で成約を決めるためには、何を話すかもそうですが、何を話さないかを事前に決めてメリハリをつけて商談を進めることが重要です。
商談当日、相手から想定外の質問が飛んでくるなどして、事前に準備しておいたことを全ては話せないケースが多いからです。
そのため、成約のキラーポイントを明確にした上で、絶対に伝えるべきポイント・話さなくていいポイントを決めておき、優先順位をつけながら商談を進めましょう。
成約のキラーポイントの具体例
海外バイヤーとは、商慣習から、文化、普段接している情報など、何から何まで共通認識が異なります。
そのため、前提知識がないと伝わらないような定性情報よりも、数値を交えた定量情報の方がわかりやすいです。
日本や海外での取引実績、マーケットの規模、納品スピードなど、自社の実績や信頼性を示す具体的な数値を提示できるように準備しておきましょう。
数値の具体例
取引条件を記載した契約書を作成し、その場で契約書を交わすことができる状態に準備しましょう。
海外バイヤーは、初回の商談で、契約の意思決定をする可能性もありますし、成約を決める上で、取引がスムーズに進むかどうかを重要視しているケースも多いからです。
価格など事前に決めきれない場合は、ある程度の幅を持たせた上で、具体的な数値で示せるように取引条件を整理しておきましょう。
事前に整理すべき取引条件の具体例
成約のキラーポイントに関連して、クロージングに繋げるために何を質問すべきか?あらかじめ整理しましょう。
短い商談では、ネットで調べられるような内容についての質問や、興味本位の質問をする時間はほとんどありません。
取引相手に成約を決めてもらうために、どういう情報を伝えたら刺さるか?を探ったり、自社として取引すべき相手か?を見極めるための質問にフォーカスしましょう。
そのためには、事前に質問を精査することが欠かせません。
問いの具体例
今回は、海外商談を成功させるために重要なポイントを、失敗事例を交えながらご紹介しました。
ぜひ、この記事を参考にしていただきながら、海外商談に臨んでいただければと思います。
この記事を書いた人
荒島 由也スター・コンサルティング・ジャパン代表、STAR KITCHEN創業者。ベトナムで料理教室、洋菓子製造・販売事業も展開。ホーチミン高島屋に店舗を持つ他、 スターバックス、セブンイレブンなどを取引先に持つ。