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昨今、建築費の高騰が続いており、今後5年でさらに建築費が上がることが想定されています。本記事ではその背景と、活用することで建築コストを大きく抑えることができる制度についても紹介します。
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000112.html
ご存知の通り、いま建築費の高騰が止まりません。
ここ数年でもコロナ禍を期に25%も建築費が上昇したデータもあり、年々建築費の高騰が続いています。
食品メーカーであれば、工場建設は一世一代の大仕事。
おそらく今使っている工場は、先代の方が建てた工場であるケースがほとんどではないかと思います。
残念ながら、現時点でも30-40年前に比べて大幅に建築費の高騰が生じています。
そもそもどうしてここまで建築費が高騰を続けているのか、
まずはその点についてご紹介します。
人件費や材料費の高騰など時代背景による理由もありますが、長期スパンで見た時に一番大きな影響を与えたのが「建築基準法」の改正です。
これまでに比べて大きく建築に求められる基準が厳しくなったことで建築に関わる費用が増えていきました。
例えば、車は20年前に比べて大きく費用が上がっています。その理由として挙げられるのが機能の充実です。
昔はナビや自動ブレーキシステムのような高度な機能はついていませんでした。
今となっては機能性も安全性も高くなり、求められる水準が上がったことで、全体的に車の値段も上昇を続けています。
建築に関してもこれと同じことが起きています。
阪神淡路大震災によって厳しくなり、さらに2005年の姉歯事件によって、建築に求められる基準が大幅に厳しくなりました。
当時は、建築費を抑えるために本来求められるべき機能よりも低い機能で建築をしていたケースも散見されていた時代です。
しかしながら、この1件を境に建築の基準が厳格化され、いまは法令通りのことしかやらない時代です。
このような背景から、当時500万円くらいだったものが1500万円くらいかかるまで費用が大きく膨らむようになりました。
2023年までもかなり費用が高騰しているとお伝えしてきました。
しかし、今後5年はもっと費用が高騰すると予想されています。
その理由は「大阪万博」の開催です。
いま日本中で電線やブレーカーなどの電気資材、セメントなどの工事用の資材が不足して入手できない状況になっています。
これまでの長い歴史でも電線の不足は稀で、類を見ない材料不足です。
そのような状態で、ただでさえ建築が難しい状況ですが、そこに「大阪万博」の影響が上乗せされていくと予想されます。
大阪万博が終了した後、日本初のカジノ付き統合型リゾート(IR)の準備が始まり、需要と供給のアンバランスが暫く続くことになるので、今後5-6年かけてさらなる材料費高騰・材料不足が続くはずです。
こういった背景から、もしすでに30-50年ほど工場を使っており、老朽化が目立つようであれば、早急に建て替えを検討したほうが良いと考えられます。
とはいえ、資金的に余裕がない会社も多いかもしれません。
工場を建てようと思った時に活用できる制度を最後にご紹介します。
いま、国が輸出を積極的に促進するために、工場建設に関して大幅な補助が受けられる補助金や、もらえる融資、税制優遇などがございます。政府の狙いに沿った計画を作れば、大きな補助を受け取ることが可能です。
「輸出」する企業が対象ではありますが、結果的に輸出が出来なくても受け取れることがあります。1度目を通してみてください。
こちらの融資は、日本政策金融公庫が出しているものです。
「輸出事業計画」を作成し、国の承認を取得した後に受け取ることが出来ます。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/nourin_shokuhinyushutsu.html
融資限度額は負担額の80%以内で、さらにこちらの強みとして、融資期間が「25年」です。
かなり条件の良い融資なので、是非検討いただきたい融資です。
本補助金は輸出を視野に入れた企業がHACCP認証取得を推進するための
工場新設・改築に使える最大5億円の補助金です。
1.の融資と組み合わせれば、融資を受けた資金で建設を行い、その費用の一部が補助金によって返ってくるため、現在資金に不安があっても建設を始めることができます。
さらに、「輸出事業計画」の承認を取得していれば、1.と併せて税制優遇も受けることができます。機械・装置、建物等の資産について、最大5年間の割増償却が活用でき、減税効果も期待できます。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/gfp/attach/pdf/yusyutsu_keikaku-20.pdf
工場建設は食品メーカーにとってめったに起こるものではありません。
しかし、もし現在40代の社長さんであれば、今後20年以上工場を活用すると考えると5年〜10年以内に建築を考えている会社も多いのではないでしょうか。
そのような状態ならば、材料費高騰の波が来る前に、建築を済ませておいたほうが大きなコストダウンにつながります。
さらに、現在は補助金を始めとした工場建設に活用できる制度があります。
特に、築50年近い工場の場合は、老朽化によって万が一地震が起きたときの影響なども計り知れませんので、ぜひこの機会にご計画ください。
この記事を書いた人
北條 竜太郎慶応義塾大学法学部卒、京都大学大学院修士課程修了
外資系経営コンサルティング会社の朝日アーサー・アンダーセン(現PwCアドバイザリー)、
オリックス㈱の事業投資部門を経て2006年秋より現職。
家業である大阪の中堅食品メーカー「茜丸」の借金22億円を完済し、再建した経験から
現在は食品業界専門のコンサルタント活動を営む。