column
私自身は、ずっと飲食業界にたずさわってきたわけではありません。
今現在、飲食店を経営しておりますが、立ち位置的には異業種から飲食業界に参入してきました。
そのせいか、飲食業界での成功の再現性はどのようにすれば可能かという視点で、異業種と飲食業界の比較等、飲食業界を客観的に分析した上で、自身の飲食店をオープンし、現在進行形で繰り返し改善のための行動をしています。
その現場からの生の情報をできるだけオンタイムで届けつつ、「異業種から飲食業界に参入するために重要なポイント」を中心に記載していこうと思います。
巷では飲食業界はレッドオーシャン(競争が非常に激しい既存市場)として認識されており、今から飲食店を開業して成功するには非常に難しい業界とされています。
その裏付けとして、飲食店は他の業種に比べ最も廃業率が高く、開業から3年以内の廃業率は70%、5年で80%、10年では90%以上と言われているほど生き残るのが難しい業種です。
現に、私の周りでも泣く泣く閉店しました、という知らせを聞くことは少なくありません。
以上の情報は、飲食業界に携わっている方、もしくは飲食業界にそこまで興味がない方、誰でも知っている情報だと思います。
したがって、これだけの情報を目にした瞬間に飲食業界は難しいという印象が根深く残ります。
また個人的な見解ではありますが、この数値は大幅な改善をすることはないと思います。
一方で、自身が実際に飲食店を経営する中で、一つの疑問点が生まれているのも事実です。
それは、
飲食業界って本当にレッドオーシャンなの?
という疑問です。
もっと言うと、飲食業界はレッドオーシャンではなく、やり方によってはある意味ブルーオーシャンになり得る可能性が高い業界だと考えています。
確かに飲食業界は、先で述べたように廃業率が非常に高く、その理由の一つに参入障壁が低いことが挙げられます。
というのも、規模、業態を問わなければ初期投資1,000万円〜1,500万円程で開業することができます。居抜き物件であれば初期投資をもっと抑えて開業することも可能です。
また、料理のクオリティも業態によってはそこまで求められていない場合もあり、実際に料理の多くが食品会社から仕入れたものを少しだけ調理して提供するといったスタイルのお店もあります。それに料理することは、こだわり・一部の高等技術を除いて、誰でも一度は経験したことがあり、難易度がそれほど高いものではありません。現に料理を作っているのは、多くの場合そこまで料理経験のないアルバイトというお店がほとんどです。
かんたんに言えば、ある程度のお金と知識があれば、いつでも誰でも簡単に飲食店ができる(やろうという気持ちにさせる)業界であるということです。
では、なぜ飲食業界がブルーオーシャンであると言えるのか。
それは、飲食店をオープンするに当たって次のおさえるべきポイントをおさえているか否かによって飲食業界の見え方が劇的に変わるためです。
以上は飲食店の成功確率を1%でも上昇させるために必要なことを、総論的に大事なポイントに絞ってお話しします。
(各論や深掘りについては、次号以降に掲載予定)
「あなたはなぜこのお店をしようと思いましたか?」
就職面接で質問されそうなフレーズですが、まずはこれを徹底的に自分自身に語りかけて、言語化してください。
「儲けたいため」はNGです。なぜなら、それは当たり前だからです。利益を出さないとお店は続けられません。
こちらは意外とできてない方が多いです。
もちろんできていないと成功しないという訳ではありません。
こちらの重要性は、3点から考えられます。
お店をオープンすると数年間、数十年間長く厳しい戦いが始まります。いつだって気が抜けません。これは自身が積極的に行動する原動力に必ずなります。自分自身が行動しなくなるとお店は潰れます。またお店を始めるにあたって、何かしらの理由があると思いますし、大きな想いがなければ自身の理想のお店を想像して作ってください。
従業員は(自分自身程)簡単には行動してくれません。行動してもらうための意識付けが必ず必要になります。
こちらは見落としがちですが、かなり重要です。というもの、お客様にリピートしていただくための理由付けになります。
最後に技術的なポイントになりますが、理念やコンセプトがしっかりしていると、メディアからの取材を受ける機会が多くなります。これは販売促進にもつながるので、その点でも重要だと言えます。
こちらは、自分自身どのような料理(以下商品)が得意か、何を経験してきたかに強く依存すると思います。得意分野で勝負するのが一番いいとは思います。
それでは、その商品が実際に美味しいのか否か、それは全く問題にはなりません。正確に言うと、美味しいというのは当たり前で議論にはなりません。
ここでいう商品力とは、ラインナップと見せ方のお話です。
ポイントとしては、SNS(インスタ、X等)を強く意識してください。
昨今はインスタ映えという商品や店舗を揶揄した表現が見られ、それに対して拒絶反応を示す方も一部おられますが、それは全て無視してください。というのも、昔から商品というものは、目で見て楽しむという文化があります。せっかく美味しい商品が見た目は良くないだけで来店に結びつかないのは非常にもったいないです。
最後にこちらも商品力が高ければ、メディアからの取材を受ける機会が多くなり、販売促進につながります。
飲食店がマーケティングと言われて、どのような想像をされますか?
マーケティングと言われても、何をすればいいか戸惑う経営者様も少なくありません。
マーケティングとは簡単に言うと、商品やサービスが自然と売れる仕組みをつくることです。
こちらについては、深掘りする機会を設けさせていただこうと思っておりますが、飲食店を想定した上で簡単に申し上げると、商品を誰にどのような方法で情報として届け来店につなげるか、と言う道筋を予め全てこちらで用意することです。
その中で、まずは「誰に」というところを想定しましょう。
それはサラリーマンなのか、学生なのか、家族連れなのか、客層を解像度高く意識し言語化することが非常に重要です。これは、商品力や立地にも強く影響します。
ある意味こちらが一番重要といっても過言ではありません。
なぜなら非常に売れる商業施設に入れば、売上は上がります。
じゃあ、結局立地じゃないか。これさえおさえれば大丈夫。
と思いますが、それは難しい話の場合がほとんどです。
まず路面店の場合、いい立地はまず空きませんし、空いたとしても自身に情報が回ってくるまでに次のテナントが決まります。不動産情報に予約や行列ができている状態で何年も待たないといけない状態だということです。
またいい商業施設は店舗の規模(資金力)とブランド力(信用力)が必要です。また定期的に入れ替えが行われます。売上が低いと退店させられます。
そして、上記のテナントに入居するためには、初期費用である不動産費用等が非常に大きくなる可能性が高いです。商業施設によっては、工事費込みで1億円以上になるといった事例も珍しくありません。
そのためこういったいい立地を獲得するために、そこそこいい立地で、ブランド力と資金力を向上させる必要があります。
そこで、その他の4つのポイントをおさえた上で、そこそこいい立地とはどこかを決定する必要があります。
「店舗を長く続けられる秘訣はなんですか?」
このような質問に対してどのような回答をされますか?
回答を一つだけに絞ると、
「店舗スタッフが気持ちよく働いてくれてるからです。」
と答えられる必要があります。
その理由は、店舗運営は、当たり前ですが、1人では運営できないからです。1人でやると確実に体を壊します。また、店舗スタッフがいないと多店舗展開ができません。
そうです。ほとんどの場合、店舗運営には自分以外の人が必要です。
ただ、その必要な「人」ですが、求人を出してもなかなか応募がこないという状況です。
全ての準備は万端で、確実に売り上げを出せる状況を出しても、人がいないと店舗はオープンできませんし、もちろん営業もできません。
では、どうしたらいいか。
答えは、店舗オペレーションを効率的にすることです。これは、工事のレイアウト(調理と提供の動線作り)の最適化とオペレーションのマニュアル化に分けることができます。
まず、工事レイアウト(調理と提供の動線作り)の最適化とは、定位置管理と最適な調理・提供の歩数をできるだけ少なくするためのシミュレーションを行い、それに基づいてレイアウトを決定します。理想はトヨタの生産方式のように、できるだけ動かずに全てができることです。これは、多くの飲食店で意識されています。また最近では、タブレットメニューや自動セルフレジのようにお客様自身でメニューの決定・支払いをしていただくと、スタッフの当該工数が減少します。
次に、オペレーションのマニュアル化です。これは簡単にいうと、スタッフが守るべき規範と行動、トークスクリプト等です。こちらは細かいところまで作り込む必要があります。どこまで作り込む必要があるかというと、飲食店ではじめて働く人で用意に理解できる程度です。これをすることにより、スタッフの能力に依存することなくスムーズな運営が可能となります。なお、マニュアル化というと、少なからず否定する方もいらっしゃいますが、マニュアルとはやるべき最低限のルールを言語化したものであって、それが全てではありません。なお、マニュアルがなくスタッフの裁量や感情に任せていると質の担保ができなくなります。
またこれらを達成すると、商品提供のスピードが上がる等、お客様の満足度も上昇します。
一般的に事業をしている限り、日々の改善は必要です。
最初にやったことが全て上手くいき、それをそのまま続けても利益を生み出し続けられることは100%ありません。
したがって、売上が上がらずダメだった時は、業態転換も頭の片隅に入れておく必要があります。例えば、ワタミがやったように、居酒屋業態から焼肉業態への転換のようにです。
これは、非常に難しい判断にはなりますが、この業態転換が功を奏して売上が上がった事例も非常にたくさんあります。
以上、大事なポイントを5つ挙げましたが、これら全てができていれば成功するといったものではありませんが、成功している飲食店はこれら全てが上手く機能しているお店が多いのも事実です。
そして、これらのポイントをしっかりおさえ分析・行動を繰り返してくと、飲食業界の中でブルーオーシャン的地位を築けることも十分可能だと思います。さらに突き詰めていくと、飲食業界の枠組みから独自の業種業態への変貌も考えられると感じています。
この記事を書いた人
和家 潔2007年公認会計士試験合格
2019年合同会社WEDGE WORKSを創業
2021年ラーメン店「肉と麺と」を大阪の京橋にオープンし、今現在繁盛店へ。
会計士からの視点で、飲食店経営、店舗経営コンサルティングを展開。