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食品産業における技術開発と商品開発は、常に変化する市場ニーズに対応し、消費者の期待を越える製品を生み出すための鍵です。この分野では、品質の保持及び向上だけでなく、効果的なマーケットイン戦略が成功への道を開きます。本文では、食品産業における最新の技術応用と商品開発の取り組み、そしてこれらが如何にして新たな市場を開拓し、業界の未来を形作っているかを探究していきます。
「良い製品を作ったから必ず売れるはず」
「こんなに高価な原料を使っているから値段を高く設定しても売れるはず」
「高齢者の方々は、お金を持っている方々が多いから高くても買ってくれるはず」
と言われる方がいらっしゃいます。
確かにこの会社の製品は良い品質のものです。しかし、それが本当に市場に受け入れられて売れているかと言うと、必ずしもそうではありません。
これはプロダクトアウトであって、生産者本位の想いで、マーケットは必ずしもそうではありません。昭和の高度成長期の時代、バブルの時代ならそれもあったでしょう。しかし、今はその時代ではありません。現在は消費者がマーケットを作る時代です。マーケットインです。マーケットにニーズが無いものを開発しても、またそのカテゴリでの商品が飽和状態では、商品構成が成立しません。
プロダクトアウトは生産者目線、マーケット開拓は市場が創るマーケットインです。
ターゲットは、ペルソナ、「森林」から「そこの樹木」です。そしてコンセプトは、ベネフィット、「もの」から「こと」です。
新商品を購入して頂ける方々、ターゲット、さらにペルソナを設定し、会社、製造の強みを生かし製品を作り上げる製造の技術とマーケット戦略を練り上げたものが新商品、そしてその新商品がペルソナに幸福をもたらすこと、それが商品開発です。
例えば、20歳後半から30歳前半のキャリア女性で、結婚されて、子供さんがいらっしゃる。そして、毎日仕事に追われているが家族も仕事も大事、仕事帰りに駅中のショップに寄って夕飯の買い物、おつまみを購入する。月一で、ちょっと贅沢して、外食、買い物をする、というようなターゲットと言うよりペルソナです。
大きい森ではなく、その中の一本、一本の樹木の集団です。
それらは、顧客の欲求や願望を採り入れるだけでなく、それに顧客が予想しない価値を付加し驚きと感動を持つものを作ること、ストーリー性を持つことです。
最近のスーパーでは、「中食化」が進んでいます。コロナから開放され第5類になっている影響もあり、出前、宅配、配達で、総菜系、個食化、カット野菜、健康志向、無添加などなどがキーワードとなり、新たな食のマーケットを構成しています。
食品加工技術の情報、知識、知見、スキルの修得も大切な要因です。
「差別化された付加価値のありストーリー性のある商品」です。
その企業は技術基盤がしっかりしており、色々な技術開発、商品開発を行ってきました。その中で難消化性の食物繊維の新素材を開発しました。今ならば、そのニーズは範囲が広く市場の拡大は見込めたでしょう。
技術的、マーケット的に新規性があり、その企業でしか出来ないシナジー技術の製品でした。食品の市場動向、マーケット性から、事業性が高く、新しい食のニーズを切り拓く商材だと社内で注目を集めていました。確かにその素材の開発マップを考慮すると汎用性が高く、機能性も良く、これからの食品の新たな分野を築き上げる素材になり得ると誰しもが考え、プラントも建築し、工場を運用し、生産活動を行っていきました。
しかし、「食物繊維」という付加価値の機能よりも「増量剤」としての一部営業の安易な考えから、ベクトルが違った方向に向き価格が先行し、付加価値の機能として販売する方向では営業を怠り需要が減っていきました。
こんなに良いものを開発したから、難消化性の食物繊維を開発したからとプロダクトアウトになり、さらに機能よりも価格に走ってしまい、差別化が出来なくなってしまったことで、衰退していきました。
その食物繊維をマーケットでどのようにニーズとマッチングしていくか、機能性の用途で必要としているか、そのニーズを掌握できず方向性、チャネルを間違い、ニーズの無い方向に向いていき、このように事業撤廃になる事例があります。
技術開発、商品開発において、特に食品はニーズ、マーケット、市場動向が重要なポイントとなります。良いもの、良い技術を開発しても、それが市場ニーズ、マーケットの無い方向に向けば、認知されずに売れず、衰退の方向に走ります。
どのペルソナに向けた機能性、商品性の開発品か、どの世代向けか、家族向けか、男性女性、生活形態、そして、その製品商品を手にした人が幸福を得られるか、ベネフィットです。
そして、その似た成功事例は、素材系では、A社のアミノ酸甘味料です。
外部環境、内部環境を鑑み、自社の強み、弱み、機会、脅威(競合他社の情報)、を要因分析し、商品開発の方向性を設定し、商品を開発します。
いくら差別化される技術、物を持っていても、市場にニーズの無いものを開発しても無駄な時間を費やすだけです。
利益の源泉となる製品です。
品質、デザイン、ブランド名、パッケージ、サービス、保証までを含めて製品です。
その根本には「製品を通して顧客ニーズをどう満たすか」「製品を通して提供できるメリットは何か、ベネフィットは何か」との観点があります。その上で、自社の製品を既存の市場の中でどう位置付けるかも重要になり、これには価格にも大きく関わってきます。
市場で販売するうえでの価格です。価格を設定することで必然的に決定されてしまうものが、ターゲット層です。価格を決定する過程では、「顧客が購入してくれる価格なのか」「製品価値との整合性はあるのか」「適正な利益を得られる価格であるか」ということの慎重な検討が不可欠となります。
製品を市場に流通させるための流通経路や販売する場所。実存店舗であれば、自社店舗、コンビニ、百貨店、量販店、質飯店など形態、ターゲット層は多岐に渡りますし、立地や店舗数も勘案する必要があります。近年規模が拡大しているネット販売のように、受注から販売までをインターネット上で完結させる方法もあります。
いずれにせよ、「ターゲット層に確実に製品を届けることが出来る流通形態になっているのか」という観点でその妥当性を検証する必要があります。 また、どのような経路で販売するかということは、その製品のイメージや戦略にもつながります。量販店やコンビニでいつでも購入できる商品と、質飯店、百貨店でしか取り扱いがない商品では、同じ商品であったとしても、その製品に対して顧客が持つイメージは大きく異なります。
さらに、食品の場合は品質保持の観点から、「冷凍」「冷蔵」「常温(グロッサリー)」の3形態があり、品質保持、賞味期限に応じて製品形態、流通、さらに流通コストが変わってきます。食品での重要な検証事項です。
市場の顧客ニーズを満たす製品を制作し、ターゲット層を決め、そのターゲット層に購入機会を提供出来る流通、販売経路を確保します。
この後で更に必要になることが、「いかに製品を認知してもらうか」です。 製品がどれほど優れていても認知されていなければ意味はありません。認知して、更に購入してもらえなければ企業に利益は生じません。
代表的な例としては広告やCMがありますが、この他にもイベントの実体やメルマガの送付などもプロモーションのひとつの手法となります。
また、流通の検討と同様に、プロモーションに関しても「情報を確実にターゲット層にお届けする」という観点から、発信メディアや市場に流す情報、そしてプロモーションにかける予算を検討する必要があります。そしてそれは、プライスに反映することになります。
[Customer Value(顧客にとっての価値)]
[Customer Cost(顧客が費やすお金)]
[Communication(顧客とのコミュニケーション)]
[Convenience(顧客にとっての利便性)]
安全・安心な製品の提供、消費者、末端使用者の「少しでも新しいものを!」との思いから“賞味期限・3分の1ルール”など、品質保持に関する規制があります。
安全で安心な食品をお客様にご提供し食べて頂くという考え方から設定します。
食品劣化の3要因の生物的要因・化学的要因・物理的要因を理解し制御して、さらの食品劣化の3要素となる“温度”“水分”“酸素”をいかに制御していくかが、食品製造、開発の重要なポイントです。
美味しいと言われる食品の要素の味・風味・食感・余韻(余韻が購買意欲、つまりリピートになります)を目標とする製品にどう付与し、残し、再現し、均一に製造するかが製造技術です。
つまり②同様に「食品劣化の3要素の温度・水分・酸素」を制御して、維持していくことが重要だとご理解頂けますでしょうか。
環境改善:結露原因とその対策
静電気対策
原価低減化 ~ 7つのムダ削減
市場や市場動向やニーズに応え、成長分野を見据えた新たな創造を開発する。
競合分析、顧客ニーズの掘り起こし、「集客商品」と「主力商品」の2軸製品の開発、コンセプトに基づいたネーミング、品質、販売価格(卸し価格、上代価格)、パッケージ、アフターサービス(顧客に選ばれる商品尾開発)
実際に商品を購入してもらうための活動-購買の直接的な動機付け
プロモーション、販売促進と販促計画
導入費用、宣伝費などのコストに対して売り上げが低く、利益を生み出しにくい
競合も増える可能性あり
成熟期の長短が製品のライフサイクル全体の長さを決める主要な要因
この時期を見極め、リニューアル、パッケージ、荷姿変更、品質のブラッシュアップを実施し、成熟期に戻すか検証する
このように、技術開発、商品開発を実施しつつ、マーケットを見極めることが、新商品を生かすことになります。
この記事を書いた人
久壽米木 正一食品全般のR&D、食品工場基本設計建設、食品工場生産性改善・原価低減化の、経験、実績、スキルから、食品事業基盤、ソフト面、ハード面の構築にお役立ち致します。