column
「シンガポールにも自社の製品を輸出したいが、実際どうかな?」
「シンガポールはすでにマーケットが成熟していると思うが、どうしたら成功できるか?」
シンガポールへの食品輸出を検討しているものの、多くの競合他社がいる中で、シンガポール進出を成功させることができるかわからず、お困りではないでしょうか?
シンガポールは東南アジアの中でも先進国であり、物価が高く、日本食品は売れやすいですが、選択肢が多くロングセラーとして定着していくことは難しい側面もあります。
そこで本記事では、ベトナムでの事業歴10年・日本企業の海外進出支援事業を営む筆者が、シンガポール進出の課題と成功の鍵を握るポイントをお伝えしていきます。
ぜひ最後までご覧ください。
シンガポールに進出する上で、言語の問題など様々な壁がありますが、海外ですぐに日本製品がバカ売れするイメージがあるためなのか、「営業に時間がかかること」に課題を感じていらっしゃる企業が多いです。
日本でも、営業を始めてから、商品が実際に売れるまでに時間がかかりますが、海外だとなおさら時間がかかります。
なぜなら、日本で構築されているネットワークや知名度が0からの状態でスタートするからです。
さらには、日本の多くの企業がすでにシンガポールに進出しており、競合がたくさん存在することも理由としてあります。
以上の理由からも、シンガポールで日本製品がすぐに「バカ売れ」するわけではなく、営業に時間がかかることが進出の難しさなのです。
このようにシンガポール進出は一筋縄ではいきませんが、成功させるためのポイントを抑えることで、「意外にも日本で売れていない製品が売れる!」と言う可能性が拓けます。
ここでは当たり前のようで、多くの企業がつまずいている成功のポイントを4つご紹介します。
営業には時間がかかりますが、早い段階で見切りをつけずに、少なくとも3年は着実な努力を続けましょう。
3年継続した段階で、バカ売れしていなくても、売上が少しでも上向いていれば、十分に可能性は拓けます。
先ほどお伝えしたように、海外でのビジネスは日本での知名度やネットワークが0からの状態でスタートするため、想定以上に芽が出るのに時間がかかります。
最初の1-2年はほとんど芽が出ていなくても、数年単位で努力を継続していると、現地で取引先や顧客とのネットワークができるので、意外にも日本で売れていない製品が売れるという可能性は生まれるのです。
そのため、海外進出を成功させるためには、少なくとも3年は踏ん張りましょう。 そして、その前提で、投資計画を立てるようにしましょう。
すぐに芽が出ることがない海外進出では、自社の商品を「必ず売るぞ」という気持ち、やる気と情熱を持って、営業を数年単位で継続していくことが非常に重要です。
一方で、明らかにマーケットに合わず、努力が実らない商品もあります。
「必ず売るぞ」と言う気持ちで営業を継続しつつも、「本当に自社の商品が本当にマーケットにあっているのか?」、「自社の商品の中でも、他の商品の中でマーケットに合うものがないか?」などについて、冷静に見極めるようにしましょう。経営計画次第ですが、場合によってはマーケットインの発想でその市場のニーズから商品を開発・投入することも検討してください。
当たり前のようですが、シンガポールは英語圏なので、日本語ではなく英語の企画書を作成するようにしましょう。
シンガポールは日本の商社も多く、言語面でのサポート面も行き届いているため、英語の企画書をお持ちでない企業は実際に多いです。
しかしながら、企画書は海外進出の命運を握る要になります。自社製品の魅力は何か、それをどのように海外に伝えるかという大方針を示すもので、現地の取引先や関係者にプレゼンしたり、協力を仰ぐ際に重要になってきます。それだけでなく、現地のマーケティング施策を形作る重要な役割も担います。
そのような重要な書類上の文言を他社に任せるのではなく、自社で作成するようにしましょう。
競合他社が多いシンガポールで勝ち抜くためには、適正価格を見極めることが非常に重要です。
海外で値付けをするときに、海外向けの卸売価格ではなく、日本感覚で値段を設定される企業様がいらっしゃいます。日本での卸価格にプラスで、運賃・手間賃・店賃がかかるとものすごく価格が高くなってしまい、現実的に購入できない値段になってしまいます。
確かにシンガポールは物価が高く、富裕層の購買力も高いですが、「シンガポールだから高く売れるだろう」では競争を勝ち抜いていくことは難しいです。やはり現地の競合品の価格を睨みつつも、海外向けに値段設定は考えた方がよいでしょう。
なぜなら、商品の選択肢も多いため、マーケティング施策と合わせて価格を戦略的に決めて消費者に訴求しないと、「消費者に選ばれ続ける」ことは非常に難しいのです。
「国内と同じで出そう」ではなくて、ちゃんと長く市場に残っていくための適正価格を見極めて値付けしましょう。
ここまでで、シンガポール進出を成功させるためのポイントをお伝えしました。
いずれも、当たり前のように聞こえるかもしれません。
しかしながら、海外進出において、日本では当たり前のビジネスの基本ができていない企業がたくさん存在するのが現状です。
例えば日本でも3ヵ年計画を立てて事業を推進することは一般的だと思いますが、海外進出においてそのような計画を立てていらっしゃる企業は少ないです。
「海外」と聞いた瞬間、「難しいかな?」「どうしていいかわからない?」と身構えてしまい、日本でのビジネスとは違う何か特別なことをする必要があると思われるご担当者が多いのかもしれません。 確かに、シンガポールは、もちろん日本とは食文化も異なりますし、言語面での壁はありますが、ビジネスの根っこの基本は同じです。
● 商品の価値を言語化し、ターゲットに商品の価値を訴求し、商品を売っていく。
● 時間をかけてネットワークを構築しながら、認知や顧客を増やしていく。
● 最初はすぐにうまくいかない前提で、数年単位の計画を立てて事業を進めていく
など、日本で多くの企業が取り組まれているビジネスの基本を、海外では取りこぼしてしまう罠に、多くの企業が陥ってしまっています。
そのようなビジネスの基本を抑えないことで海外進出を失敗してしまうのはもったいないことですし、
逆をいえば、基礎的なところを準備するだけでも競合の企業より一歩前に進めることができるのです。
海外という特別な環境だからこそ、基本を抑えてビジネスを進めていきましょう。
本記事では、シンガポール進出の難しさと、抑えるべきポイントを解説しました。
当たり前のことを着実に行うことで、海外でのビジネスチャンスは拓けます。ぜひ本記事を参考に、海外進出の計画を練っていただければと思います。
この記事を書いた人
荒島 由也スター・コンサルティング・ジャパン代表、STAR KITCHEN創業者。ベトナムで料理教室、洋菓子製造・販売事業も展開。ホーチミン高島屋に店舗を持つ他、 スターバックス、セブンイレブンなどを取引先に持つ。