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中国へ食品の輸出販売に取り組む際、現地で開催される展示会へ出展することは市場開拓において非常に効果的な方法のひとつです。とは言え広大な中国の各地で数多く開催されている食品関連の展示会のうち、どれを選んで出展するかは非常に悩ましい問題です。
選定に当たってはいくつかの視点がありますので、この記事を参考にしていただき、重視するポイントと貴社の現状を照らし合わせ、総合的に判断してください。
(展示会出展前に知っておくべき事前知識や行っておいた方が良い準備については事前準備編をお読みください)
日本から製品を輸出すると、通関費用、関税などのコストが上乗せされていき、最初に売り渡す相手(荷受人)への販売価格(中国の倉庫着原価)は、工場出し値の1.5~2倍程度になるでしょう(関税や商品のコンテナ積載効率による)。そこから販売者の利益や中国国内での保管費用、配送費用などがプラスされていき、消費者の手元に届く頃には日本の市場価格の2.5~3倍以上となるのが一般的です(1人民元=20円で計算)。ほとんどの商品において日本で購入するより割高、円高人民元安が進めば更に高くなります。
日本において200円で買えるものが中国現地では500円となれば、いくら中国市場が大きいとは言え、誰もがその価値を認めてお金を出すわけではありません。単純な人口ではなく、比較的収入の高い層の人数が多い地域はどこなのかを考慮する必要があります。
中華料理とひと口に言っても、四大料理(北京、上海、広東、四川)を味わってわかるように、地域によって食文化は異なります。生活習慣やそこで生まれ育った人々の性格も、特に北と南では大きく異なります。以下は日本人に馴染みの深い都市の1月と8月の平均気温です。
大連 1月 0℃ -7℃ 8月 28℃ 22℃
北京 1月 2℃ -7℃ 8月 30℃ 21℃
上海 1月 8℃ 2℃ 8月 31℃ 25℃
広州 1月 18℃ 11℃ 8月 33℃ 26℃
※参照:Weather Spark
単純に気温だけを見ても、冷たい飲料やスイーツを売ろうとするなら南を攻める成功率の方が高いということになります。習慣や性格の面においても、上海の位置する華東地区より南の地域の方が、新しいものや概念を受け入れやすい傾向にあります。
上海や広州といった、日本との直行便も多く市場としても魅力的な都市は、進出しやすいためライバルも多くなります。それを避けるために、敢えてそれ以外の都市を狙うという戦略もあるでしょう。
中国の一線都市に位置付けられているのが北京、上海、広州、深圳の4大都市で、不動産価格、平均収入、生活水準などの指標が基準となっていますが、その次に位置づけされているのが「新一線都市」です。商業施設の充実度、都市のハブとしての機能性、市民の活性度、生活スタイルの多様性、将来の可能性などの指標を評価しポイント化したものです。現在15の都市が「新一線都市」とされており、2023年版のランキングはつぎの通りです。
1位 成都 (四川省)
2位 重慶 (重慶市)
3位 杭州(浙江省)
4位 武漢(湖北省)
5位 蘇州(江蘇省)
6位 西安(陝西省)
7位 南京(江蘇省)
8位 長沙(湖南省)
9位 天津(天津市)
10位 鄭州(河南省)
11位 東莞(広東省)
12位 青島(山東省)
13位 昆明(雲南省)
14位 寧波(浙江省)
15位 合肥(安徽省)
これらの都市の共通点として、交通の便が良いことが挙げられていますが、それはあくまで中国国内での話です。成都が新一線都市の一位に輝いているので早速進出したいところですが、日本から訪問する際の移動距離はかなりのもので、運よく直行便に乗れても行きは成田から約6時間、乗り継ぎの場合は9時間を超えてきます。
貴社製品の輸出が開始された後も、現地での同行営業や展示会への共同出展など、年に1~2回は中国への出張を行うことになるでしょう。1級都市を加えた上の19都市にはそれぞれの魅力がありますが、移動効率や距離も考慮に入れることをおすすめします。
コロナ禍においては開催が見送られた展示会も多くありましたが、2023年からは再び多くの展示会が開催されています。ここでは2024年に中国で開催予定の代表的な食品展示会を、エリア別に紹介します。
【注意事項】
・展示面積、出展社数、来場客数はあくまで展示会主催者が出展者招致の際に発表しているものであり、実際とは異なる場合があります
・諸事情により開催日程の変更や、開催自体が中止となる場合があります
・見出しの地域名には日本の常用漢字を使用していますが、展示会名に地域名が含まれる場合は実際の展示会名を優先し、中国簡体字のまま表記をしています
言わずと知れた、中国最大の経済都市です。省には属さない直轄市で、2023年の「上世界の都市総合力ランキング」でも世界15位となっている国際都市です。新一線都市にもランキングしている浙江省の杭州や寧波、江蘇省の蘇州や南京へも高速鉄道で日帰りでき、華東地区全体をターゲットエリアとした場合の中心拠点としても重要です。
開催日程:2024年3月27~30日
会場:上海国家会展中心
展示面積:400,000㎡
出展者数:3,000社
来場者数:250,000人
WEB:https://files.hotelex.cn/hot24/baidu-coffee.html?bd_vid=7677648354736830156#c
第32回上海国际酒店及餐饮业博览会(HOTELEX)と同時開催。世界各国のカフェ、ティーショップ、スイーツショップなどが一堂に会する。競合調査の機会としても有用。
※上記の数字とWEBサイトはHOTELEX全体についてのものです。
開催日程:2024年5月21~24日
会場:上海国家会展中心
展示面積:320,000㎡
出展者数:2,200社
来場者数:400,000人
WEB:https://www.bakerychina.com/
ベーカリー業界だけでなく、個人経営のケーキ店や、スイーツショップからの来場者も多い。カテゴリーが限定されているため、親和性の高いパン、スイーツ、コーヒー、飲料での出展は具体的な取引につながりやすい。秋にも開催されるが春がおすすめ。
開催日程:2024年5月28~30日
会場:上海新国际博览中心
展示面積:200,000㎡
出展者数:5.000社
来場者数:180,000人
フランスで1964年に開催されて以来60年の歴史を持つ、世界各地で開催されている国際的な食品総合展示会SIALの中国上海版。輸入食品以外にも様々なカテゴリーの食品が出展されているため、出展時には埋没しないような企画・演出も必要。
開催日程:2024年7月17~19日
会場:上海国家会展中心
展示面積:320,000㎡
出展者数:3,500社
来場者数:100,000人
第23回CBME孕婴童展と同時開催。子ども・ベビー業界向けの総合展示会。食品も大きな展示面積が用意されており、この分野で中国市場への進出を検討している企業は要検討。
※上記の数字とWEBサイトはCBME全体についてのものです。
開催日程:2024年8月28~30日
会場:上海新国际博览中心
展示面積:120,000㎡
出展者数:3.000社
来場者数:80,000人
冷凍の食品および食材をテーマにした展示会。真夏の上海へ展示用の冷凍製品サンプルをハンドキャリーで持ち込むのは現実的でないため、現地に在庫がない場合は事前に輸出しておくことが必要。
開催日程:2024年11月5日~10日
会場:上海国家会展中心
展示面積:367,000㎡
出展者数:3,400社
来場者数:410,000人
WEB: https://www.ciie.org/zbh/index.html
中国政府主導の大規模展示会。来場者数も多いが食品に特化した展示会ではないため、具体的な商売につながるかは未知数。国際的な認知度が高い企業でないと単独での出展申込は困難。
開催日程:2024年11月12~14日
会場;上海新国际博览中心
展示面積:200,000㎡
出展者数:3,000社
来場者数:170,000人
上海ではSIALと並んで規模と歴史のある総合食品展示会。中国国際輸入博覧会と時期が近く、今後重なることもあり得るため、出展時の宿泊ホテルの予約は早めに行う方が良い。
eコマースの分野において、中国で知らない人はいないであろうAlibaba Group Holdingなどの本拠地として知られる浙江省の都市です。その影響により法人個人問わずオンライン販売が盛んなため、この分野でビジネスを行う来場者との取引も期待できます。
第十三届(杭州)全球新电商博览会
開催日程:2024年3月6日~8日
会場:杭州国际博览中心
展示面積:40,000㎡
出展者数:800社
来場者数:80,000人
ネットショップ運営者だけでなく、ライブコマースやTikTokを利用したオンライン販売をする個人やインフルエンサーも多く来場する。食品に特化した展示会ではないものの、宅配便での配送ができる商品であれば十分に検討の価値あり。
中国全土でも常に上位の経済規模を誇る江蘇省の省都で、上海から高速鉄道1本で移動できるアクセスも魅力です。中国の都市別GDPランキングで2020年に初めてトップ10に入っています。
開催日程:2024年8月8~10日
会場: 南京国际展览中心
展示面積:50,000㎡
出展者数:1,800社
来場者数:80,000人
食品、飲料、酒類、乳製品、調味料などの総合展示会。
開催日程:2024年11月28~30日
会場:南京国际展览中心
展示面積:50,000㎡
出展者数:1,800社
来場者数:80,000人
食品の総合展示会。
水産業で有名な山東省の都市で、経済的にも重要なポジションを担っている。市の中心地が国際空港からも遠くないため、日本からの移動がしやすい。上海からも陸路で物流が可能。
開催日程:2024年7月1日
会場:青岛世界博览城
展示面積:30,000㎡
出展者数:1,000社
来場者数:80,000人
酒類だけでなく加工食品全般が対象の展示会。開催期間が1日しかないので注意。
中南エリア、華南経済圏に含まれる広東省に属する一線都市です。日系の自動車メーカーの進出も多く国際感覚が高いだけでなく、温暖な気候で夜まで外出できる時期が長く、外食産業も盛況。同じく一線都市の深圳、新一線都市の東莞へのアクセスも非常に良好。
開催日程:2024年5月10~12日
会場:广交会展馆A区+D区
展示面積:150,000㎡
出展者数:1,500社
来場者数:200,000人
WEB:https://www.fhcchina.com/lp/fhc-south-china
上海で長年に渡り蓄積した展示会運営ノウハウを、FHC華南として広州でも展開を開始。外食産業向けの食品、特にベーカリー、スイーツ、コーヒー、飲料などを中心に出展者を募集している。
開催日程:2024年5月11~13日
会場:广州保利世贸博览馆
展示面積:60,000㎡
出展者数:2,000社
来場者数:75,000人
WEB:https://www.fhcchina.com/guangzhou
同じFHC華南としての展示会で、こちらの方が食品総合展示会の要素が強い。アフターコロナにおける経済活性化を目的とする側面もあるようで、こちらは2023年からスタートしている。进口食品展とは会期も会場も異なる。
開催日程:2024年6月14~16日
会場:广交会展馆
展示面積:25,000㎡
出展者数:400社
来場者数:16,319人
WEB:http://www.waterexpocn.com/
2021年には2,349億元、2025年には3,000億元を超えると予想されている中国のボトルウォーター市場において、高い伸びを見せている高級飲料水にフォーカスした展示会。開催規模は大きくないものの、専門性が高いためこの分野で中国市場への進出を検討している企業は要検討。
開催日程:2024年9月25~27日
会場:广交会展馆
展示面積:10,000㎡
出展者数:2,000社
来場者数:100,000人
WEB: https://www.gzfoodexpo.com/
食品の総合展示会。輸入食品専門の出展エリアが用意されている。
前は中国語入力しなければ変換できなかったため「深セン」と表記されることが多かったのですが、今は日本語キーボードで「深圳」と変換できるようになったことでもわかるように、中国だけでなく世界でにおいても屈指の金融・IT都市として重要な都市。香港と広州へのアクセスが極めて良好です。
第22届全球高端食品展(ALL FOOD)
開催日程:2024年3月1~3日
会場:深圳国际会展中心(新館)
展示面積:80,000㎡
出展者数:1,400社
来場者数:110,000人
長い歴史のある食品の総合展示会。第16回中国アイスクリーム・冷食展と同時開催。
開催日程:2024年4月24~26日
会場:深圳会展中心(福田)
展示面積:40,000㎡
出展者数:800社
来場者数:30,000人
ヨーロッパ最大級規模の食品・飲料関連見本市「ANUGA」の協力で開催される食品の総合展示会。国際手づくりアイスクリーム展示会、ベーカリー&コーヒー展示会と同時開催。
開催日程:2024年9月2日~4日
会場:深圳会展中心(福田)
展示面積:60,000㎡
出展者数:1,500社
来場者数:67,000人
SIAL上海の深圳版に位置付けられる食品の総合展示会。輸入食品の展示にも力を入れている。
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湖北省
中南エリアの比較的北部に位置する湖北省の省都で、中国中部経済における中心都市です。武漢の緯度は上海よりやや南で、同じ中南エリアに属するとは言え、広東省よりは華東地区の市場と抱き合わせる方が効率良いかもしれません。海外からの大型スーパーマーケット進出も増えているように、消費力の高い地域としても注目されています。
開催日程:2024年3月28~30日
会場:武汉国际博览中心
展示面積:270,000㎡
出展者数:5,100社
来場者数:300,000人
食品の総合展示会。オンライン販売に従事する企業や個人の来場にも期待ができる。
開催日程:2024年12月6~9日
会場:武汉国际博览中心
展示面積:80,000㎡
出展者数:1,100社
来場者数:150,000人
WEB:http://www.eaex.cn/index.php
食品の総合展示会。
中南エリアの最北部に位置する、河南省において経済的に重要な都市。中央アジア、ヨーロッパ、北京、上海と鉄道でつながる一帯一路構想における交通の要衝でもあります。
開催日程:2024年4月24~26日
会場:郑州国际会展中心
展示面積:48,000㎡
出展者数:1,600社
来場者数:100,000人
酒類だけでなく加工食品全般が対象の展示会。
開催日程:2024年6月3~5日
会場:郑州国际会展中心
展示面積:35,000㎡
出展者数:680社
来場者数:40,000人
WEB:http://www.importfoodfair.com/cn/spring/
酒類も含む、食品の総合展示会。
中国一線都市のひとつ。中央政府のお膝元でもあるためか、他の一線都市に比べて規制等が徹底されやすい傾向にあります。進出するにはそうしたリスクも織り込んでいくことが必要です。
開催日程:2024年3月15~17日
会場:中国国际展览中心(朝阳倌)
展示面積:60,000㎡
出展者数:2,000社
来場者数:70,000人
WEB:http://cifbe.cn/
食品の総合展示会。
開催日程:2024年4月13~15日
会場:中国国际展览中心
展示面積:60,000㎡
出展者数:1,000社
来場者数:80,000人
ベーカリー、軽食、スイーツ、コーヒー、飲料をメインとした展示会。
開催日程:2024年5月24~26日
会場:中国国际展览中心(朝阳倌)
展示面積:50,000㎡
出展者数:1,000社
来場者数:60,000人
食品の総合展示会。輸入食品展示エリアでは主に菓子、スイーツ、コーヒー、飲料、酒の出展者を募集している。
北京の東南近くに位置する直轄市で、経済力の非常に高い都市のひとつです。貿易港もあります。
天津国际餐饮食材展
開催日程:2024年9月6~8日
会場:天津梅江会展中心
展示面積:30,000㎡
出展者数:500社
来場者数:50,000人
飲食店向け食材をメインとした展示会。
開催日程:2024年9月26~28日
会場:天津梅江会展中心
展示面積:42,000㎡
出展者数:400社
来場者数:32,000人
WEB:http://www.icecreamchinashow.com/
アイスクリームと冷凍食品および生産設備などをメインとした展示会。
2023年まで8年連続で新一線都市の1位にランクされている、中国西部最大の都市で、四川省に位置します。南アジア、東南アジアへの物流拠点として今後ますます重要度が増していく見込みです。ただし沿岸部の都市ではないため、海上輸送で輸出する場合は通関後の陸送距離が長いことに留意が必要です。
開催日程:2024年6月27~29日
会場:成都世纪城新国际会展中心
展示面積:35,000㎡
出展者数:400社
来場者数:50,000人
WEB:https://www.hotelex.cn/chengdu
上海咖啡美食文化节と同列の展示会。コーヒー、紅茶、飲料、スイーツ、ベーカリー業界向け。2024成都国际酒店用品及餐饮博览会と同時開催。
以上、一線都市および新一線都市で2024年に開催予定の主な食品展示会をピックアップしてみました。日本の見本市主催会社経由でも出展申し込みができる展示会もありますので、食品の中国輸出成功に向けて、ぜひ積極的に出展を検討してください。
この記事を書いた人
本炭 康典上海で自社ブランドの納豆を200店舗以上へ卸販売した経験を活かし、日本製の食品を中国へ輸出および消費者市場に向けた販路拡大のサポートをしています。