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食品の安全に関する問題が度々発生し、規制が厳格化する中、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points)認証は企業の信頼を築く上で重要な取り組みとなっています。しかしながら、初めてこの取り組みを開始する企業にとって、どこから手を付けて良いか、理解できない場合もあり、お悩みを抱えていることでしょう。この記事では、HACCP認証を取得する前に、自社にHACCPシステムを導入するための必要な段階を紹介します。これにより、HACCP認証の取得を目指す皆様にとって有益な手助けとなるでしょう。
まずは、HACCPを導入するためには、HACCPチームを結成する必要があります。HACCPチームとは、簡単に言えば皆さまの会社の食品の安全を推進・リードするメンバーの集まりです。チームの形態は、企業の人員や製造している製品の複雑さによって異なります。例えば、各部署から代表を1人選出する方法や、小規模の企業では従業員全員がチームメンバーとなることもあります。このチームは、会社の業務工程の分析や管理方法の確立に中心的な役割を果たすため、なるべく幅広い知識や経験を持ったメンバーで構成されることが理想的です。個々のメンバーに責任を任せるのではなく、チーム全体で協力してHACCPの構築を進めることが重要です。
次に、HACCP認証の対象となる範囲を決定します。対象を明確にすると、製品やプロセスに関連するリスクを正確に特定し、それらに対処するための効果的な対策を講じることができます。必要なリソース(人員、時間、資金)を適切に配分し、認証プロセスを効率的に進めることができます。また、適用範囲が明確であることは、顧客や取引先に対して企業の取り組みや責任が透明であることを示し、信頼を築くのに役立ちます。
前提条件プログラムとは、食品製造の施設において、HACCP計画を正常に実施するために必要な環境や設備の条件を整えるための基本的な取り組みです。これは、HACCPが機能するための土台となるものであり、非常に重要です。HACCPシステムは食品の安全を担保するシステム(仕組み)ですが、このシステムを構築、運用している会社や組織でも、食品の事故やクレームが発生する例が多々あります。事故やクレームが発生した原因を紐解いていくと、実はこの前提条件プログラムの不備に起因することが少なくありません。
以下に、前提条件プログラムの例を紹介します。
HACCPシステムを自社に導入するには、7原則12手順と呼ばれる導入の原則手順があります。以下にご紹介します。
はじめてHACCPを自社に導入するときに最も苦労する点は、上記の手順に沿って文書や記録を作成し、会社内の全員にその内容を理解し運用してもらうことです。会社に適した適切な危害分析や管理方法を設定できなければ、HACCPシステムの効果を発揮することができません。工程をすべて明確にし、その工程に関連する危険性を明らかにする(危害要因の分析と呼ばれる)には、専門の知識や経験が必要となります。このような知識や経験がない場合、外部コンサルタントのような補助を活用することも検討すべきです。それぞれの手順ごとに重要なポイントがあります。今回の記事では、手順の詳細な解説は行っていませんが、今後の記事でご紹介させていただきます。
この記事では、HACCPチームの結成、対象範囲の決定、前提条件プログラムの重要性について、掘り下げてきました。これらの要素は、企業がHACCPシステムを効果的に導入し、認証を取得するための基盤を築く上で欠かせない部分です。
HACCPチームの結成によって、異なる視点や専門知識を統合し、食品の生産プロセスに潜むリスクを的確に特定することが可能になります。さらに、対象範囲の明確な決定は、HACCPシステムの適用範囲を明確に定義し、それに基づいて適切な戦略を展開するための重要な一歩です。
また、前提条件プログラムの整備は、HACCPシステムの効果を補完し、食品の安全を確保するための基本的な条件を整える役割を果たします。これらのプログラムが適切に構築されることで、食品の安全性や品質を維持するための基盤が整い、HACCPシステムの信頼性が高まります。
これらの要素を適切に理解し、実践することで、HACCP認証に近づく事ができるでしょう。
この記事を書いた人
赤谷 淳一◆製パンメーカー:品質管理部門に従事しHACCPを導入
◆インターネット小売り:新規倉庫の立上げ、生産性改善業務をリード
◆ISO認証機関:審査、研修講師を担当
◆独立し、HACCP導入・コンサルティングを提供
食品製造、飼料、食品保管倉庫・配送、食品容器包装等、幅広い食品関連企業に対するコンサルティング経験・実績が強みです。